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地下本の世界


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こういうやつじゃないです。

 

本日も仕事用にまとめた資料から。

お題は〝発禁本〟なんですが、地下本のくくりの中に発禁本がある程度含まれるイメージなので七面堂究斎さんの「閑話究題××文学の館」より「地下本基礎講座」を簡単にまとめてみました。

出典はこちら。興味のある方はどうぞ。

kanwa.jp

 

◎発禁本と地下本は違う

発禁本は〝発禁処分〟を受けたもの。戦前は出版法などによる検閲、戦後は刑法のわいせつ物頒布など。(その他輸入禁制品、郵便禁制品など)

 

地下本は、戦前は検閲のための納本をされないもの、戦後は図書館法により国会図書館に納本されないもの

「公刊する事を前提としていない出版物の内、性を主題として扱っているもの。但し、刊行当時公刊しても差し支えなかったと思われる内容のものは除く」

 

近世から今日、一貫して法律違反の対象とされたのは性に関するものだけである。

  • 奥付けあるいはそれに類するものがない
  • あっても明らかに嘘
  • 非売品。ただし非売品即地下本とはかぎらない。
  • 無納本であることが記録として残っている、国会図書館で検索してもない。

 例えばいわゆる〝ウラ本〟は地下本にあたりますが、摘発されていなければ発禁本ではありません。

 

 ◎「三大奇書」とは

「袖と袖」

尾崎紅葉の作ともその門人の作ともいわれる「三大奇書」の一つ。

「春の夜」「里唄」と作者が異なるという「町帖」「雪ぶすま」を正編、

「桃さくら」「通り魔」が続編となっており、さらに別の作者の作と言われます。

初出は明治40年らしいですが、有名な作品なので違うタイトルでも、何回も出されているそうです。

 

素封家の長男、要之助とその周囲の男女の乱れた関係を描きます。

みんながみんなとやるポルノならではのストーリー。

 

乱れ雲

昭和4年初出。「袖と袖」と同じく各章が独立しているシリーズもの。

佐藤紅緑の作とされていますが、「三大奇書」の中では一番研究が進んでおらず、謎が多いとされています。

全12章ですが、最初の数章のみで刊行されているものも多いようです。

 

完全版が出版されています。

 

前半は帝大生の俊次と下宿先のお嬢さん・京子が主人公だが、俊次が駆け落ちしてしまってからは、京子と使用人・秋山少年を中心に物語がすすみます。男20人VS女4人という、SOD作品みたいなシーンもあり。

 

四畳半襖の下張り」

三大奇書」の一つ。昭和25年に話題になりました。有名すぎる作品です。本人は否定していたそうですが、永井荷風作で間違いないようです。

最高裁まで争って、昭和55年に有罪が確定しています。

「本篇は芸術作品であってわいせつではない」という趣旨で裁判を起こしたのでしょうが、

読むとやっぱり相当エロいみたいです(僕は呼んだことがありません)。

発禁部分まで書いたバージョンは、今では読むことができません。

どのぐらいのものなのか読んでみたいですね、

とりあえず、僕みたいにグーグルに怒られるようなレベルとは違うんだろうなw

 

金阜山人という人が自宅の襖を手入れしていて、下張りに何やらびっしり書き込まれているのを発見する。一枚一枚剥がしながら読むと、ある男の性の遍歴が微に入り細を穿って綴られていた。

 

 

◎昭和初期のエログロ・ナンセンスの旗手・梅原北明

「ロシア大革命史」や「デカメロン」の翻訳で名をあげ、文芸資料研究会を設置、

「変態十二史」を刊行した。大正十五年に刊行が始まった同書は、〝変態〟という言葉が流行りかけたこともあって、三回もの発禁処分を受けたが全十五冊も刊行するほど人気だった。

 

その後「変態資料」「ファンニーヒル」「明治性的珍聞史」などを刊行。

しかし、「変態十二史」以外は納本していなかったことがバレ、当局に大目玉を食らう。

 

「文芸市場」に専念するが、やがてすべて発禁状態に。身の危険を感じた北明は上海へ逃げる。上海で出版したのが「カーマシャストラ」「日本猥褻俗謡集」「夜這奇譚」などだった。

 

市ヶ谷刑務所を出所後、昭和3年に雑誌「グロテスク」創刊。公刊誌だったので内容は薄く、創刊号は無事だった。しかし、2号以降は発禁に。

 

この頃、エログロはもっとも脚光を浴びるが、北明ら軟派出版界は戦後を待たず、やがて没落した。

 

 

 

 

◎性体験手記

「相対」

小倉清三郎が主宰した「相対会」が大正2年から昭和19年まで刊行した資料。

会員の性体験報告をまとめたものが中心。

会員には坪内逍遥芥川龍之介平塚雷鳥伊藤野枝らもいた。

 

「セイシン・リポート」

性啓蒙家・高橋鐡が主宰した日本生活心理学会の機関紙。

昭和29~38年刊行。昭和45年に有罪が確定。

 

「高資料」または「K資料」

第三次木曜会という医者による性研究団体が蒐集した資料に、高伴作という人物が文学的な修飾をして発表した性文学の資料集。昭和29年に最初の資料集「輪姦願望の女」が発表された。

 

◎会員制雑誌

【戦前編】

「文芸市場」当初は左翼系の文芸誌だったが梅原北明が一人で仕切るようになって、急にエログロ化した。終刊間際にはすべての号が発禁処分。

 

「変態資料」大正15年に梅原北明が創刊。当局が介入したのちに上森健一郎に譲る。納本されるようになっても発禁処分は続いた。昭和3年まで刊行。

 

「カーマシャストラ」

「文芸市場」廃刊後、上海に逃げた梅原北明が後続誌として創刊。昭和2~3年刊行。

 

「奇書」

上森健一郎の金主をしていた福山福太郎が顧問に佐藤紅霞を迎え、創刊。昭和3~4年刊行され全十三冊だが、ほとんど発禁になっており、二冊しか現存しない。

 

「変態黄表紙

「変態資料」の後継誌。全四冊。上森健一郎編集だが、途中で手を引いたらしい。

 

「グロテスク」

梅原北明が刊行。当局を誤魔化すためにグロのほうが前面に出ていて、公刊誌のため内容は薄いらしい。昭和3~6年まで刊行。

 

【戦後編】

「人間探究」文化人の性科学誌というコンセプトで創刊された。

昭和25~28年

 

あまとりあ文化人の性風俗誌をうたい、昭和26~30年まで刊行。

執筆陣は高橋鐡氏など「人間探究」とほぼ同じ。62の体位を解説した「あるす・あまとりあ」のミリオンヒットに気を良くして創刊。

 

「稀書」昭和27~28年

「奇書」昭和27~30年

アドニス昭和27年~ ホモ系雑誌。いつまであったのかは不明。

「生活文化」昭和28~29年 有名な「高資料」もこれに登場。

 

【まとめ】

地下本の歴史と代表作品ををざっくりと、勉強しました。

発禁本には地下本ではない〝表〟にものや、

江戸時代以前のもの、海外のものなどもあり、かなり深淵なジャンルです。

全部勉強……できるかなあ…。