【ケース3】
ある夜、著者がナナプラザのある中規模店にいると、ステージ前のカウンター席に座っていたファランが目の前で踊っていたダンサーを手招きした。
ダンサーはしゃがみ込んでファランと話していたが、やがて顔の前で手を横に振ると、さっと立ち上がって踊りに戻った。
著者が眺めていると、ファランはまた女のコを手招きする。今度はドリンクを買ってあげたようで、ダンサーは再びしゃがみこんで、コーラを飲みながら話していたが、ものの数分でダンスに戻ってしまった。そして両脇に立っている同僚たちと何やら笑いながら話している。
ファランはまた女のコを手招きするが、先ほどのダンサーは動かず、隣にいた同僚の肩を押して相手をさせた。そのダンサーも数分話しただけで立ち上がり、また仲間同士で何やら話して笑っている。
もう一度ファランが手招きしても、ダンサーたちは誰も行こうとせず、互いに押し付けあっている。
ファランは気分を害したようで店を出て行ってしまった。
著者がダンサーの一人を呼んで、何があったのかを尋ねると、ファランはダンサーにオールナイトで1000バーツというオファーを出していたのだという。
彼女たちにしてみれば、それは不当に低い額だったのできっぱりち断ったという。オールで2000バーツ以下の値段は人を馬鹿にしているので、そのような申し出があったら、価格交渉以前に相手にしないのである。
〝リスクを減らすこと〟よりもさらにバーガルたちが関心を持つのは〝儲けをおおきくすること〟です。
ここからは彼女らが儲けを増やすためにどのような思考のもとに行動しているのかを見ていきたいと思います。
(11)などで説明したように、〝あれ〟における男性客からバーガールへの支払額は、ショートで1000~2000バーツなど、ある程度の〝相場〟が決まっています。
ゴーゴーを訪れるお客はおおむねこの相場を共有しており、バーガールがこの額を不当に吊り上げることは不可能です。ときどきぼったくりみたいな値段を請求してくる輩もいますが、それが通ることはほとんどありません。
したがって「一般論としては単純な性交渉1回あたりの料金のつり上げには限度があるということだ」(本書)となります。
〝あれ〟1回あたりの料金を上げることに限度があるということは、回転を多くして稼ぐほうが容易だということになります。
こうした条件の中で、バーガールが商売するには1回あたりの値段を大幅にディスカウントしてでもお客を逃さないことが販売戦略となるはずです、
しかし、実際には彼女らが大幅なディスカウントをして〝あれ〟をさせてくれることは滅多にありません。とくに一定以下の値段になると取引を失うことになっても、男性客のオファーに肘鉄を食らわすのです。【ケース3】
「これは経済的な利害計算からというよりは、すぐれて社会的・心理的な関心によるものである」と著者は指摘しています。
つまり、自分たちが考えている価値以下の価格提示に応じてしまうことは、自分を不当に低い価格で売る、ということで自らの自尊心を傷つける行為だというのです。
そして、その価格で〝あれ〟をさせてしまったことが同僚に知られると本人の面目がつぶれてしまうことになり、そうした状況をバーガールたちは極度に嫌うのだといいます。
こうした状況により、バーガールが男性客とする〝あれ〟の値段は多少の変動こそあれ、一定幅の価格に落ち着いてしまうのです。
したがってバーガールが〝本数〟をこなすには、ディスカウント以外の戦略をたてなければならないということになります。次回はそのあたりを。
なるほど、いくら困っていてもあまりに安い値段は期待できないってことなんですね。
たしかに冗談で安い値段を言ったら、ぶちキレられたことがありますわw
でも逆に「不当に高い価格」で売ってしまった場合はやっぱりアゲアゲなんでしょうかww