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『ゴーゴーバーの経営人類学』を読む (27) ~彼女は何のためにカラダを売るのか~


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閉店しちゃった?『Playskool』(http://www.bangkok-infoguide.comより)

 

 

久しぶりの『経営人類学』です。

本日から第5章に入ります。6章はまとめなので実質的に最終章です。

本章は『経済外的な関心と私的な親密性』というタイトルがついております。わかるようなわからないような。ま、いってみましょう。

 

これまでに書いた通り、ゴーゴーを舞台に繰り広げられるゴゴ嬢らと客の関係は、〝経済的関心の交錯〟つまりカネへの妄執のしがらみ合い、その結果として分析できることが多いと言えるでしょう。

しかし、ゴーゴーに通った人であれば、ゴーゴーが必ずしもそんな修羅の世界ではないということは経験的にご存じなのではないでしょうか。

著者もその点は否定していません。むしろときにはそういった損得抜きの感情がカネへの 欲望をしのぐことさえあると言っています。これまでに何度か登場している社会学者のコーエンさんもゴゴ嬢と客の関係が長期化・日常化していく背景として、当事者たちにカネ以外にも多様な関心があると言っているそうです。

ゴーゴーバーが純粋に経済的な取引の舞台とはなりにくいのは、このような〝不確定要因〟が経済学の理屈の他に働いているからなのです。

では、男女を動かす多様な動機と関心というものはどんなものか、見ていきます。

 

 

【ケース13】

ノイ、ゲーオ、ナットの三姉妹はナナプラザでダンサーとして働いている。彼女たちは中部タイの農村の出身だ。家族は両親と2人の息子、4人の娘。長女は両親の近くに住んでいる。

ゲーオは三女で26歳、8年前にバンコクに出てきてナナプラザで働いている。16歳で地元の鶏肉加工場に就職したが仕事が好きになれず、恋人とバンコクに出てきた。

現在は恋人とその間にできた息子とナナプラザから30分ほどの2500バーツのアパートに住んでいる。彼女の月収は月給とドリンクバック合わせて1万バーツほど。その他客とえっちしてもらう金が月に1万バーツほどある。恋人も8000バーツほど稼ぎがあるので、生活には余裕があるが、実家への送金は月に1000~2000バーツほどだ。

ゲーオはテレビやオーディオなどの高価な家電が大好きで貯金はあまりしていない。客をとっていることは恋人には内緒なので、そのぶんの1万バーツはまるまるポケットマネーなのだが、ほとんど遊びや酒に消えるという。

ナットは19歳。中学を卒業と同時にバンコクへ出てきた。最初はウェイトレスをしていたが、より良い給料をもとめて18歳になるとゲーオの紹介でダンサーになった。

最初、ナットは客と寝るつもりはなかったが、給料だけではそれほど稼げないので客をとるようになった。彼女は遅刻や欠勤が多いので月給は3000~4000バーツほどしかない。やる気がないのでオフのノルマもあまり達成できない。それを咎めるゲーオとケンカして現在の店に移った。彼女は仕事熱心ではないが、やはり若いだけあってトータルの月収は2万バーツ近くはある。家賃1500バーツのアパートに一人暮らしで夜遊びは好きだがそれ以外の生活はわりとつましい。仕送りはしていない。

次女のノイはまだゴーゴーで働き始めて3か月だ。彼女は結婚して実家の近くに住んでいたのだが、夫が女をつくって逃げたため、2人の子供を実家に預けて働きに来た。地元では良い仕事を見つけることができなかったという。

彼女はダンサーだが、客と寝たことはない。彼女は30過ぎで子供を2人産んでいるのでスタイルは良くない。積極的に愛想をふりまくこともないのでドリンクバックも少ない。毎日真面目に出勤しているが、オフのペナルティを引かれると月の総収入は7000バーツほどにしかならない。それでも妹たちに助けてもらっているので、生活は苦しくはない。実家には毎月2000バーツ送金している。もっと収入があれば仕送りを増やしたいし、そんな仕事が他にあればいつでもゴゴ嬢を辞めたいと思っている。

姉妹に加えて2人の兄弟も仕送りをしているので、実家の両親が毎月受け取る仕送りは合計7000~8000バーツほどになるという。田舎で暮らしていくには十分な額だ。著者がゲーオとノイに仕送りの額が低くないかと聞いたところ、みんなの分を合わせれば十分な額だから構わないという返事だった。実際、著者は両親の家を訪ねる機会があったそうだが、家こそみすぼらしいものの、テレビ、冷蔵庫、ステレオ、カラオケセットまで完備されており、暮らしは貧しくはなかった。

 

 

従来の研究の多くは、タイ社会においては女性が経済的に家族を支えるという暗黙の縛りによって、強制的にセックスワークへと駆り出されているという図式を強調していました。タイのセックスワーカー全般でいえば、それはおおむね当てはまると思われます。しかし、幅広いセックスワークの世界では一部当てはまらない業態もあるのだ、と筆者は指摘しています。

ゴゴ嬢たちが高収入に憧れるのは、日々の食べ物にも困るような貧困や家族を支えるためではないのです。

前出のコーエンさんのレポートでは平均月収1841バーツの置屋の従業員が収入の39%を仕送りしていたのに対し、平均月収6151バーツのMP嬢は22%にとどまったとのことでした。額でいえば後者のほうが多いんですけどね。

セックスワークを半強制的にやらされておらず、なおかつ収入が高い場合、収入に占める仕送り額の割合は減る傾向にあるのだとか。ゴーゴーは自由意志で選択する仕事でありセックスワークの中では高収入の部類に入るため、置屋などにくらべると仕送りの必要に迫られている人は少ないのかも知れません。

もちろん、田舎に子供のために働いている、という嬢もちょいちょいいますが、傾向としては自分のためのカネへの欲求から、ゴゴ嬢という仕事をしているのです。