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『ゴーゴーバーの経営人類学』を読む (41) ~ゴゴ嬢、愛のモラル~


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『Billboad』(Instagramより)

 

 

久しぶりの『経営人類学』です。あと、2~3回で終了です。

前回は客から支持されることでゴゴ嬢が自分の可能性を再発見することがあること、そして、そんなゴゴ嬢としての成功も、一般のタイ社会では評価されないこと(ただし地方では経済的成功が評価される傾向にある)について読みました。

しかし、その一方で外国人男性をボーイフレンドに持つことは、たとえ相手がジジイで経済的な援助を受けていたとしても、通常のセックスワークにはあたらない、と認識されているようです。〝仕事抜き〟の関係であれば、それは〝愛〟であり不道徳ではない、ということなのだそうです。

そもそも、タイ社会の常識がわからない外国人相手の商売ということで、ゴゴ嬢はうしろめたさを軽減されているふしもあります。その証拠にタイ人男性がゴーゴーバーに来ることに強烈に嫌悪感を示すゴゴ嬢は少なくないそうです。

 

若いタイ人女性の間では性に対して従来の性的規範とは違ったモラルが広まりつつあることは90年代以前から報告されています。その背景にはテレビや雑誌の中の現代的女性像への憧れがあるようです。そして、西洋的なロマンティックラブのイデオロギーが変換された〝独占的愛〟の思想があるのだといいます。

 

〝独占的愛〟って。ひどいネーミングだな。もう少し何とかならなかったのでしょうか。社会学者の命名らしいですが。

 

〝独占的愛〟とは男女とも相手以外に浮気をすることは許されない男女対等な恋愛関係で、お互いに誠実な愛情さえあれば婚前交渉もOKだとされます。そんな風潮がイサーンや北部などの地方でも広まりつつあるのだそうです。

そして、この価値観がバーガールたちが外国人客との恋人関係(疑似含む)においては、自身の行動を正当化する拠り所となっているのです。

〝独占的愛〟の価値観においては「結婚前の若い娘がどこの馬の骨ともわからない外国人のオトコと」と白眼視されてきた所業も、〝ステディな二人〟として祝福される傾向にあるのです。

 

【ケース23】

アンはナナプラザでダンサーになって9か月。24歳で3歳の子持ちだが、童顔なのでもっと若く見える。英語も達者なので店ではそこそこ人気があった。

ある日、若いオーストラリア人が店を訪れた。彼はアンの同僚の客だったがそのコはおらず、彼はふだんお気にいりのコにしかドリンクをおごらないし、オフもしないことで知られていたので、店の女のコたちは相手にしなかった。

アンもそれを知っていたので、彼に声をかけたのはほんの気まぐれだった。すると、彼はアンにドリンクをおごってくれ、話もそこそこ盛り上がった。

アンは閉店後にディスコへ行かないかと彼を誘うと、彼はOKしたので同僚を何人か連れてディスコへ繰り出した。男は普段はサイフの紐が固いので、アンは割り勘を覚悟していたのだが、なんと全部おごるという。アンも同僚も気が大きくなり、ボトルを空けてしこたま飲んだ。

明け方になり、同僚二人は帰ったが男はまだ飲み足りないようで、アパートに来て飲まないかという。アンは素直に誘いに応じた。その日いろいろ話してみて男に好感を持ったからだ。アンが言うにはそれは恋愛感情ではないが2人でいて心地良かったらしい。もちろん男の容姿がアン好みだったことは言うまでもない。

その日からアンはときどき閉店後に男の部屋を訪れて一緒に過ごすようになった。アンは売れっ子なので週2回程度だが、部屋を訪れるときは代金は請求しない。彼を恋人だと思っているからだという。

アンは毎日は男の部屋に行けないため、彼が〝浮気〟をしていないか常に電話をかけて確かめている。自分が客と一緒にいて電話をかけられないときは、友人に頼んで電話をしてもらっている。

 

 

〝独占的愛〟のある相手がいても、ゴゴ嬢側は必ずしも他の男との関係を断つわけではない。上記のケースでは男性に浮気を禁じておきながら、自分は客をとっています。

これは、金銭的な動機で他の男性と関係を持つのはあくまで仕事で、その相手に愛情を持ってのことではない、だから浮気ではないというのが彼女らの言い分のようです。

そして自分がそうしなければならないのは、男側が経済的なサポートを怠っているから、というのです。まあ、そりゃそうだ。

このようにゴゴ嬢の頭の中では金銭的報酬を目的として複数の男性と関係を持つことと〝独占的愛〟が論理的矛盾なく共存しているのです。

ただし、そんな理屈はフツーは通じないことをわかっている場合も多く、パートナーの前では客をとっていることを隠したがる傾向があるようです。そして、不特定多数の男性と仕事で性的接触を持つことで、愛情や精神的なかかわりを大事に感じるようになることも多いといいます。

 

 

まあ、仕事ですからね。嫌だったらカネ積んで足抜けさせろっていう話で。

……ってか、こっちも他の女にちょっかいを出すのはある意味仕事ってことで、どうにかならないもんでしょうか。