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『ゴーゴーバーの経営人類学』を読む (45) ~〝演技〟とカネと ~


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『King's Castle1』(Twatterより)

 

 

ゴーゴーバーでの仕事は、職場で〝仕事の顔〟であることを義務付けられるいわゆる〝感情労働〟ではないことは昨日に述べました。しかし、ゴゴ嬢も職場で演技をすることはあります。

とくに明るく陽気なキャラとして振舞うことは、お客のウケに大きくかかわってくる部分なので、しばしば意図的に明るい態度でいようとしているようです。

しかしながら、銀座のホステスさんがお客に対して愛想よく接するのが厳格な職業倫理や経営者からの教育の賜物であるのに対して、ゴゴ嬢たちのそれは誰からも強制されているのではありません。あくまで自発的に行われるため、本人の意思で嫌になったらいつでも止められる性格のものです。

また、しばしばハイになって場を盛り上げた結果、仕事そっちのけで楽しんでしまうことが少なくありません。とくに酒やクスリが入ってしまうと商売を忘れがちです。

つまり、仕事に熱心に取り組んだ結果として、仕事から逸脱して私的な親密性が強調されてしまう──、そんな矛盾が生じるのです。

 

 

しかし、ゴゴ嬢たちにとって仕事から逸脱することが、必ずしもマイナスにはなりません。彼女たちが脱線して友人たちとふざけ合ったりおしゃべりに夢中になることで、男性客が楽しんでくれてペイバーゲットの流れになることは珍しくありません。

ときには男性客の不興を買う事態も想定できますが、ゴーゴーの客の多くはマニュアル化された接客よりも一緒になって騒ぐようなノリのほうを好みます。

一見、やりたい放題のゴゴ嬢たちですが、そのことが店にとってもプラスの効果をもたらすのです。

 

 

ここで連日出てくるあのキーワード〝オクシモロニック・ワーク〟がまた出てきます。

つまり、仕事を放棄してその場の享楽や男性客との親密な関係へとおぼれるという、一見職業倫理に反することが、中長期的には経済的利益のプラスをもたらすという矛盾です。

そんな経済外的な関心に基づいて行動することで、経済的な利得を得ることができる仕事、それが著者の定義する〝オクシモロニック・ワーク〟なのです。

 

 

ゴゴ嬢と男性客の一時的な〝カネだけの関係〟が、両者が互いへの関心を深めて親密さを増していくことで、長期的な関係へなっていく傾向があることはこれまでにのべてきました。

そのような関係では生活や遊びにおいて出費の共同化が行われることが多くなってきます。共同化、とは言ってもたいていの場合は男性側のほうが圧倒的に経済力がある場合が多いので男性側からゴゴ嬢側への財の流れが日常化するようになります。

さらに互いへの信頼が生まれれば、「親が病気で」「弟が事故で」などといったハードルの高い要求にもめげずに応えるケースも出て来るでしょう。

男性側のバーガールへの愛情が深まるほど、彼女の利益総額は跳ね上がります。最終的に結婚まで行けば、経済面だけでなく社会的に得られる利益はMAXです。

 

しかしながら、もちろん男性側がそこまでの要求に耐えられない場合も多々あります。ただし、両者それぞれの母国の金銭レートの差から、男性が我慢の限界に達するまでにはある程度時間がかかることが多いようです。

もっとも、ゴゴ嬢側でそのあたりを見極めて上手くコントロールすることができれば危機を先延ばしにすることは可能です。それより何より2人の関係が〝カネが取り持つ縁〟をどれだけ超えたものであるかどうかが一番問われるわけですが。

 

大事な点はこのような長期の関係では冷徹な打算のみに裏付けられた〝演技〟はまったく通じないということです。

ただでさえ、好きでもない相手を好きなフリをすることはゴゴ嬢にとって難易度の高いことだという話は以前にしました。それが長期間にわたり、さらにより近しい立場で行動を共にするわけですから、愛情表現もおざなりなものでは許されません。つまり〝演技〟のハードルは格段に高くなるのです。

さらに男性側も相手への関心や愛着が強まれば、より演技を見破る可能性が高くなります。ゴゴ嬢側が自らの努力だけで、偽りの愛を演じることは極めて難しいと言えます。

 

 

これって、翻れば今はどんなにカネの無心がひどくてぎくしゃくした間柄の女でも、出会った頃に見せた好意は嘘じゃなかった、ということでいいんでしょうか。

「あれは演技だった」って言われたほうがラクな気がするんですけどねえ。

タイガールって物欲に駆られると豹変することがあるように思います。あの姿を見るとまさに100年の恋も冷めちゃうんですけど、〝トゥルーラブ〟だったらそれも込みで引き受けるべきなのかとも思ったり。

でも、僕には「親が病気で」ってパターンはまだ無理かなあ。

嘘じゃなくても無理って論外ですか?