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『ゴーゴーバーの経営人類学』を読む (46) ~そしてゴーゴーバーは営業する~


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『BlackPagoda』(facebookより)

 

 

ゴーゴーを訪れる男性客がバーガールに求めるものは、商売っ気抜きの私的なサービスです。マニュアルのような接客は望んでいません。

男性側がそのようにプライベートな距離感での関係を持ったゴゴ嬢に対しては、愛情とともに経済的な援助を惜しまないということは、ゴゴ嬢が生真面目に仕事をすればするほど、客のニーズからはかけ離れていくという矛盾が生じます。

ゴゴ嬢側としても、無理に感情をコントロールして演技をするのと、感情のままに客との親密な関係におぼれるのとで、得られるお金に大差がない、下手をすると後者のほうがより大きな恩恵を受けられるとすれば、仕事なんて真面目にやってられませんよね。

したがって、そもそもプライベートと仕事の領域の境界があいまいなゴーゴーバーの仕事では、〝真面目に稼ぐ〟ことがお客と親密になることへの阻害要因とはなりません。ゴゴ嬢たちはよりラクな方へと流されていくこととなるのです。

 

 

しかし、ゴゴ嬢たちが関りを持ったすべての男性客と親密になろうとするわけではありません。誰かに対して好意を持つというのは自分ではコントロールできない部分であり、偶然性に頼る部分が大きいです。

ゴーゴーバーと言う場所はそんな二人を結び付けやすい環境を提供しているといえるでしょう。ゴゴ嬢は仕事を忘れて男性客と仲良くなる同僚たちを目の当たりにしているでしょうし、男性側もネットなどでゴゴ嬢と仲良くなった客の〝武勇伝〟を耳にしているであろうからです。

そんな情報が男性客に、ゴゴ嬢が商売抜きでつき合ってくれるかも知れないという期待を煽るのです。

 

 

ゴーゴーバーはゴゴ嬢と客の関係に関しては注文をつけないというのが基本的な経営方針です。ゴゴ嬢たちの〝オクシモロニック・ワーク〟はそんな店側の放任主義によって支えられています。

本来であれば、ゴゴ嬢を客にあてがって中間マージンを抜いたほうが店は儲かります。しかし、それが違法行為であること、ゴゴ嬢たちを管理する手間が生じるなどの理由から店側はそこまで踏み込まないというスタイルでゴーゴーバーの誕生から数十年やってきました。今さらこのシステムが変わることはないでしょう。

 

ゴゴ嬢たちの職場であるゴーゴーバーが持つ最後の矛盾は、仕事で成功したものが仕事から抜けていくという構造的な矛盾です。

幸運にして性格も良く財布の紐もゆるい男をつかまえたゴゴ嬢は、結婚などによってその男性の専属となるため、仕事を続ける必要がなくなります。好き好んで不特定多数のオトコと関係を持つことはないのです。

ゆえにゴゴ嬢という職業は成功して市場での勝者となることが、すなわちその市場からの撤退を意味するという特異な経済活動ということになります。

 

実際、パートナーを得て仕事を辞めていくゴゴ嬢は多いです(往々にして出戻ってくる場合もありますが)。彼女たち自身にも、ある程度稼いだらこの仕事は辞めて田舎に帰ろうという意識があるようです。

しかし、そんなふうに多くのゴゴ嬢たちがバーを去っていっても、新たに職を求めてやって来る女性たちもまた大量にいるのです。

そんな強い新規参入圧力のもとに新陳代謝を繰り返すことで、男性客にとってゴーゴーは永遠に魅力ある場所であり続け、〝オクシモロニック・ワーク〟が繰り広げられることとなるのです。