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『老いて男はアジアをめざす』レビュー(3) ~ロングステイ格差社会~


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ゴーゴーにもなかなか行けないんでしょうねえ(『Butterflies』Insatagramより)

 

 

『老いて男はアジアをめざす』を読んでいます。タイで暮らすことをまだあきらめていない僕にとっては大いに参考になります。まあ、嫌な話も多いですけど。

王道のロングステイヤーは日本での仕事を定年まで勤めあげて、あるいは早期退職して退職金をがっぽりもらって夫婦仲良く悠々自適の海外暮らし、といった人たちでしょうか。しかし、もちろんそんな人たちばかりではありません。

 

ロングステイしたい人たちのために、タイ政府はリタイアメントビザを発行しています。しかし、ロングステイヤーみんながそのビザを発行してもらっているかというと、そうでもないようです。

それは、日本に本拠地を残して短期間でタイと行き来している「リピート型」のロングステイヤーがけっこうな数存在するからだとか。日本の暑い夏と寒い冬はタイで過ごし、過ごしやすい春と秋は日本で、と二つの国のいいとこどりの暮らしを楽しめるからです。

しかし、それ以外にもリタイヤメントビザを取らずに観光ビザやビザなしで長期滞在するロングステイヤーもかなりいるといいます。

ずっとタイにいるのになぜリタイヤメントビザを申請しないのかは、さまざまな理由があるようですが、最も多いのはリタイヤメントビザの申請に必要なタイの銀行への80万バーツの貯金が都合できないからだそうです。

おカネを持っていたけど女に持って行かれた、とか事業のパートナーに騙されたという人や、はなからそこまでお金を持たずに物価の安いタイにやって来た人など、その理由もさまざまなようですが、そんな貧しい日本人もタイに膨大な数がいると言われているのです。

 

大西さん(65歳・仮名)は55歳のときに日本でサラ金に多額の借金をこしらえ、奥さんも家も失って逃げるようにバンコクへやってきたそうです。

現地の親友が経営する旅行会社に就職したものの、スマトラ沖大地震津波で業績を上げることが出来ず、親友とぎくしゃくするようになって会社を去ることに。一時期は月に5万円以下の国民年金のみで食いつないでいたそうです。一食100バーツの生活で日本食を食べることすらままならない生活でした。

現在では日系企業に就職できたものの、年齢を考えるといつまで働けるかはわからず、未来は不安しかありません。

 

 

日本人の懐を狙っているのは悪いタイ人ばかりではありません。同じ日本人に騙されるケースも多いといいます。こうした犯罪に手を染めるのは、やはり日本社会で負けた人たちが生活費の安いタイに流れて来てにっちもさっちもいかなくなってやるケースが多いと思われます。

あるロングステイヤーは次のように言ったそうです。

「日本人には二種類います。年金がちゃんともらえる人ともらえない人です。厚生年金のある日本人はまず悪さをしません。でも、話を聞いて厚生年金がなかったり、年金受給年齢に達していない人は要注意です」

……僕はどうやら要注意なほうの人なようですorz  年金ほとんど払ってないから大西さんのケースもなんだか他人事とは思えないしなあ。

 

タイの物価が安いからといっても日本なみのくらしをしようと思えばそれなりにお金がかかる──本書が発行された08年の時点ですらそうなのですから、その後めきめきと物価が上がっている現在ではもっとひどいことになっています。旅行で行っても油断をするとかなりの額がトンでいきますから。そもそもタイでの生活をスタートさせることすら、現在ではなかなかハードルが高くなっているようにも思えます。

どうも僕がタイでの暮らしを始めた場合、ちっとも明るい未来が見えません。

 

 

一時期Gダイで有名になった「社長さん」も本書では紹介しています。

奥さんを捨ててタイ女に走り地元長野にスナックを開いたものの、借金を踏み倒してタイへ。タイでもその女にさんざん貢がされたあげく、カネが尽きるとポイ捨てされて食い詰めたあげくにバンコクの場末のカラオケで拾われて皿洗いをしている高齢者です。

皿洗いといっても給料はなく、店の片隅に住まわせてもらいながら食べ物と煙草銭を恵んでもらうという乞食同然の生活。とてもサバイバルです。

カネを持っている日本人からはカネを騙し取ろうとするけど、貧乏な人には優しいというタイならではもちょっとほっこりする話として有名になりました。

 

……死にはしないんだろうけどなあ。そこまでしてタイにしがみつく根性はたぶん僕にはありません。

しかし、それでもタイでの生活というものへの憧れが捨てきれないのです。