こともあろうに2002年のカウントダウンのそのとき、ゴーゴーでぼったくられていた僕。おかげさまで、しょぼしょぼの年明けを迎えさせていただきました。
気を取り直して店を出ようとトイレから戻ると誰もいない。
連れの後輩2名や彼らが連れ出す女のコたちの姿も。
ペイバーしたはずのシャーデーの姿すらどこにも見えません。
そして、何より問題なのは財布が入った僕のカバンもきれいさっぱり消えてしまったことです。あれがないとポケットの中の小銭しかないんですけど。
僕がトイレに行ったほんの数分の間に何が起こったのか理解できず、しばらくの間僕は店の前で呆然と立ちつくしていました。
新年を迎えた街の喧噪がすごく遠くの方に聞こえます。
マジでみんなどこへ行っちゃったのか。状況がまったく飲み込めません。
落ち着いて整理しよう。
おそらく、僕のカバンは連れのD君かO君が持って出た可能性が高いと思われます。
見たら絶対に気付く場所に置いてあったはずだから。
しかし、なんで彼らの姿がないのか。
ここパッポンからナナのホテルに戻るには、タクシーに乗らなければなりません。
いかに、彼らが先汁ほとばしっているような状況で、お預けが効かない感じになっていたとしても、いくら何でも僕を置いて帰ることは考えづらいのです。
「どうしたの?」
そこへ店からシャーデーが出てきました。
どうやら彼女は単に帰り支度をするために店の奥に引っ込んでいたようです。
それにしては出て来るの遅すぎない?
「僕の友達がどこに行ったか知らない?僕のカバンも見あたらないんだけど」
いちおう聞いてみましたが、シャーデーも知らないといいます。
店の中に戻ってチーママに聞いてみました。
このチーママは貫禄があって、しかもとても悪い人の顔をしているので、
最初、ママかと思ってさんざんコーラをおごってしまいました。
「カバンは友達が持っていったよ。席にはなかった」とのこと。
しかし、ついさっきぼったくられたばかりだしなあ。何より悪い人の顔なので信用しろというほうが無理。あんたが持っているんじゃねえの?と言いたい。
大人なのでそこは飲み込みます。
質問を変えて、「友人がどこへ行ったか知っているか」と聞いてみます。
「YES」何とチーママはうなずいたのです。
「えっ、どこ?」わらにもすがる思いで聞いてみました。
チーママは相変わらず悪い人の顔でそばにいたウェイターに何事か指示しています。
ウェイターはうんうんとチーママの言うことを聞いていましたが、了解したようで僕とシャーデーに向かって親指を立てて見せました。
「彼のあとをついていけば大丈夫」とチーママ。
店の外の喧騒の中へ出て行くウェイターの後を僕とシャーデーは追いました。
(続く)
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