ウェイターのあとをついて歩く僕とシャーデー。
ウェイターは酔っぱらいやら爆竹をならすやつやらですごいことになっている路地を抜けて、ごちゃごちゃと立ち並んだ小さなビルの一軒へと入っていきます。
人混みの中、彼を見失わないように早歩きで一生懸命ついていきました。
ウェイターが案内したのはビルの2階にあるホテルのフロントのようなところでした。
いや、小さなカウンターがあるだけですが、本当にホテルのフロントのようです。
まだわりと新しいんでしょう、決して汚くはないのですが、どこか寒々しい。
宿泊客がたむろできるようなロビーもありません。
こころなしか、シャーデーの身体がこわばっている気がしました。
どうやら、ホテルに女性を連れて帰れない客のための「やり部屋」のようです。
僕もナナやソイカでお世話になったことがあります。
ウェイターがフロントの男に事情を説明すると、フロントマンはうなずいて受話器を取りました。
小さなロビーのソファに腰掛け、無言で待つ僕とシャーデー。
「気分でも悪い?」と聞くと、口角を少しあげて笑顔を作ってはいますが。
やはりシャーデー、少し引き気味。
しばらくして、ウェイターについてくるように言われ、
シャーデーをロビーに置いて、僕一人でついて行くと、とある部屋の前に案内されました。
ウェイターがドアをノックするとフロントから連絡が行っていたようで、すぐにドアが開いてバスタオル1枚という姿の女のコが顔を出します。
女のコはD君が連れ出したコでした。
そういえば、彼女はIDを持ってないから僕らのホテルには来れないと言っていたっけ。
不法滞在のラオス人らしい。18歳って言ってたけどもしかしたら未成年かも。
女のコは僕の顔を見ると、部屋に入るようにと手招きします。
部屋にはD君の姿はありませんでした。 シャワーを浴びているようです。
バスルームのドアをガッと開けると、かなりびっくりした様子で固まっているD君。
もちろん生まれたままの姿です。
そりゃあ、びっくりしますよね。
こんな怪しいホテルでシャワールームにおじさんが乱入してきたら。僕が同じことをやられたら絶対身ぐるみ剥がれると思ってめちゃめちゃびびると思いますw
「ど、どうしたんすか?」
「なんでいなくなってんだよ?」
「いや、ゴーゴーさんトイレ行くときに、先に出ますからって、言ったじゃないすか」
えっ、そおなの?(^^; …………ま、いいや。
「Oは?オレのカバンがないんだけど、知らない?」
「いや、オレ、先に出ちゃったから、わかんないす」
そう。邪魔しちゃって悪かったねと、D君と女のコに詫びて、ベッドと冷蔵庫しかない殺風景なその部屋をあとにしました。
ロビーで待っていたシャーデーは、明らかにブルーになっています。
たぶん、この「やり部屋」の雰囲気が嫌なんでしょう。
何とも言えない独特の雰囲気です。昔有名な物書きがパッポンの印象を「昔に死んだたくさんの女性が涙を流している」気配のする場所と書いていたように思いますが、ここへ来るとその気持ち、ちょっとわかる気がします。
僕が外に出ようと促すと、シャーデーの表情がパッと明るくなりました。
どうやら自分もここに連れ込まれてしまうと思っていたらしい。
「私、ああいうホテル好きじゃないの」 って…。僕のホテルならいいのかな?
そういえば、まだ、このあとどこに行こうかという相談もまったくしてないんだけど。
てか、お金持ってないんだけどどうやってホテルまで帰ろう?
(続く)
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