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よるのたび 広州ナイト(3)ダーツゲームの女


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高級ホテルのバーでいきなり声をかけてきた女のコ。

「私とダーツしません?」

その女のコは何の前置きもなく誘ってきました。

最初に僕に声をかけてきた葉巻売りのコは白いブラウスにミニのタイトスカートで店員の制服に見えないこともないですが、 そのコはピチTにGパン姿。

どう見てもバーの従業員には見えません。

やや茶色がかったロングヘア、長身でジーンズが似合うなかなかの美人。

女優の蓮佛美沙子を思わせる清楚系な顔立ちをしています。

 

「こっち来て」

僕が答えに困っていると、彼女は強引に僕の手を引っ張って席を立たせます。

連れて行かれたのは長いカウンター席のある別のバースペースでした。

ボックス席もいくつかあり、先ほどまでいたステージのあるバーよりもぐっと落ち着いたムードです。

その片隅にダーツゲームの機械が1台ありました。

点数を自動的にカウントしてくれるマシンです。

コインを投入する穴があったのでどの硬貨を入れたものか迷っていると、 彼女がコインを入れて矢を僕に渡します。

よくわからないけど、ここまできたらやるしかありません。

 

「もう1回やる?」

6ゲームほど終え、僕が勝ったのは初戦だけ。 結果は彼女の圧勝でした。

言葉があまり通じなくても、ゲームを介するとけっこう打ち解けられるもので、ゲームをする間に僕たちはなかなかいい感じになっていました。

お互いに高得点を出すとハイタッチしたり、外すと地団駄を踏んでオーバーアクションで口惜しがってみせたりとすっかり仲良しに。

いつも途中まではまあまあいい勝負なのですが、最後の方になると彼女はバンバン高得点を連発するのです。彼女の手のひらの上で踊らされているような勝負でした。 

さらに、よくわからないうちにお金をかけて、200元ほど負けています。

続けるのはやぶさかではありませんが、情けないことに腕が筋肉痛。

ダーツで筋肉痛って。どれだけ身体がなまっているんだか。

 

「いや、もういいや。ちょっと疲れちゃった」

僕は椅子に腰かけて残った4本目のビールをぐいっと呷ります。

喉を滑り落ちていくビールの美味いこと。完全に運動した後の感じになっています。

 

そのとき、彼女の後ろから声をかける男がいました。

「✖✖✖✖!○▼✖✖!」

でっぷりと太った40~50歳ぐらい?わからんけど。の白人のおっさんでした。

ちゃんとしたスーツ姿です。ビジネスマンでしょうか。

「おお~~ジョージ!」彼女の表情がパッと明るく輝きます。

そして彼女はジョージと呼んだでぶのおっさんに歩み寄ったかと思うと、ギューッと思い切りハグをしたのです。

でぶのおっさんジョージもハグで返して二人はバーの真ん中で抱き合っています。

 

「じゃ、じゃあ、僕はそろそろ……」

二人の関係はわかりませんが、何となくその場のムードに居づらくなってしまった僕は、こそこそと席を立ち、その場を離れました。

おっさんの大きな背中越しに彼女はニコっと微笑んで片手を振っていました。

 

 

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