翌日もホテルの近所で夕食を済ませると件の高級ホテルへといそいそと出かけました。
バーに行くと、昨夜の彼女が暇そうにカウンターにもたれていました。
僕を見つけると微かな笑みを浮かべて手を振ってきます。
「ハロー。今日もダーツやる?」
「こんばんは。今日は負けないよ」
しかし、昨夜同様に数ゲームののちには僕はコテンパンにされていました。
今日は500元ぐらい負けてます。
「いや、もう出来ないよ。それよりも飲まない?」
「いいですよ」
おそらく彼女(名前をきくとココと名乗りました)はその手の商売をしている人に違いない。
僕は80%以上確信していました。
声のかけかたといい、いちおう最初はゲームで盛り上げてみせるところといい。
スムーズにその手の商売に持ち込む手練手管だろう、と。
特に、言葉があまり通じない相手にはゲームをさせるというのはタイのバービアやゴーゴーでも取り入れられている手法です。
しかも、昨夜は毛むくじゃらのでぶ白人が彼女にに声をかけてきて、やけに親密そうにいやらしくハグハグしていたり。
また、そのときに僕に向かって見せた笑みは(彼はしょうがないのよ、アナタは今度ね♡)とでも言っているように僕には脳内変換されていたのでした。
(これはデキるんじゃないだろうか)
僕はかなりその気になっていました。メンエス的にはFBK状態です。
カウンターへ行って飲み物を注文しようとすると、ココは「ちょっと待って」と言っておもむろにダーツマシンのメンテナンス用の蓋をかぱっと開けました。
ダーツマシンの機械が入っている部分の空きスペースに何かが入っています。
ココはその皮のショルダーバッグを取り出します。
バッグの中からさらに彼女が取り出したのはウイスキーのボトルでした。
「え?何でそんなところにバッグを入れてるの?」
「仕事中は荷物を置くところがないから、この中に入れてるの」
「・・・・・・。」
そんなわけで水割りは彼女のおごりでした。 どうやら客のダーツの相手をするのがココの仕事らしい。商売女じゃないのね。
しかし、どこか触れなば落ちん風情も確かに。
僕の方から〝商談〟を持ちかけたら、あるいはOKだったりするのかも知れません。
でも、……言えないよなあ。事によったらめちゃめちゃ失礼だし。
どうしたものかと逡巡しているうちに水割りもなくなり。
二人の間に流れる重たい沈黙……。
すると彼女は「じゃあ、私は仕事があるから」と、すっくと立ちあがると、そのままスタスタとどこかへ行ってしまいました。
明日の夜こそリベンジだ!
そう固く心に誓った僕でしたが、翌日にはこの高級ホテルに近い場所からホテルを移ってしまったため、その後訪れることはありませんでした。
〝高級ホテルのバーにたむろする外人相手の娼婦〟を探すための高級ホテルめぐりが忙しかったからです。(続く)
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