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よるのたび 海南ナイト(3)エメラルドブルーの海にて


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海口市郊外の海。ここはそんなにキレイではないです。

 

 

海南島一周ツアーへ出発の朝。

朝の8時に迎えに行くと言われていたのでロビーにて待っていると、派手なアロハシャツを着た若い男が落ち着かない様子でやってきました。

「ゴーゴーさんですか、私、ガイドの陳です。じゃあ、行きましょう」

陳君に案内され、ホテル前に停まっていたマイクロバスの後部にバックパックを積み込み、座席へ案内されます。マイクロバスと言ってもバンに毛が生えた程度のサイズなので10人も乗れば満員になるサイズです。

しかし、中には誰も乗っておらず、陳君は助手席なので後部座席は僕だけ。

ゆったりしてていいなあ、と思ったのは束の間で、バスは市内のあちらこちらに立ち寄り、お客をピックアップしていって、30分もしないうちにバスは満員に。

かなりのぎゅうぎゅう詰めです。まあバス移動ってどこもこんなもんですよね。

 

お客の顔ぶれはなかなかバラエティに富んでいました。老夫婦が二組、ハネムーン的な雰囲気の若いカップル。ダンナのほうはいかにもデキるビジネスマンという雰囲気のイケメンです。奥さん、何だか身体が弱そうだけど。若いカップルはもう一組。こちらも今どきの若者という感じでパッと見中国人とは思えないぐらいあか抜けています。

あとは怖そうな50代ぐらいの父親と息子らしき線の細そうな少年。この二人はうがった見方をすればホモカップルに見えないこともありません。

 

一人旅、そして外国人は(たぶん)僕だけ。いや、厳密には一人旅はもう一人いました。老夫婦のうち一組の連れではあるのですが、ウルムチから来たという中年のおじさんがいました。このおじさん、ランニングシャツ(タンクトップではない)に半ズボンという鉄板のチャイニーズカジュアル姿。鼻の下にはちょび髭を生やしており、赤塚不二夫の描く〝デカパンさん〟みたいな風貌です。デカパンさんは上半身裸ですけど。

「息子が海南大学に通っているので会いに来たんだ。この方は息子の先生ご夫婦」

と、傍らの老夫婦を紹介するのです。

そのわりには老夫婦とおじさんは別行動していることが多く、あまり親密そうには見えませんでした。

 

みんな揃ったのか、陳君が助手席から身を乗り出して何か演説を始めました。たぶん旅程とか注意事項とかを説明しているのでしょう。しかし、誰一人聞いている様子はなく、それぞれがおしゃべりに夢中です。

そんな中、バスはもうこれ以上乗せたら誰かはみ出ちゃうぐらい、ぎゅうぎゅうの状態で出発したのでした。

 

最初にやってきたのは海口から140㎞ほどのところにある万泉河の河口です。島内の最も標高の高い場所から流れるこの川の河口には白砂の中州が広がり、汽水域の保存状態は世界屈指のものなんだそうです。

確かに海の色は目の覚めるような鮮やかなエメラルドグリーン。こんなにキレイな砂浜にはなかなかお目にかかれません。

 

船で中州に渡ります。中州に立つとさらに海が美しく感じられます。岸辺にはゴミなどもちらほら落ちていましたが、さすがにここまでくればそんなものもありません。

ただ、少し残念なのはここは定番の観光スポットらしく、僕らのような10人単位ぐらいの団体客が入れ替わり立ち替わりやってくるのです。

中国人団体客が行きかうウォーキングストリートばりの混雑ぶりでした。

 

「うわあ、何てキレイな海なんだろう」

隣にいた団体客の青年が、もう感動を抑えられない、とでもいったテンションで叫んでいます。もちろん中国語なので本当は何を言っているのかわかりませんが、たぶんそんなことを言っているのでしょう。思わず叫ぶ奴がいてもおかしくないぐらい、美しい海なのです。

しかし、次の瞬間の彼の行動を目の当りにして、僕はしばし固まってしまいました。

「✖✖✖✖✖✖✖✖!!!」

コーフンした様子の青年はさらに何かを叫ぶと、嬉しそうに片手に持っていたペットボトルを大きく振りかぶって海にポーンと投げ捨てたのです。

 

中国人、やっぱりスゲー。

(続く)

 

 

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