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よるのたび 海南ナイト(5)山の中のナイトショー


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こんな感じでした(sanspo.comより)

 

 

街灯一つない真っ暗闇の中を20分ほどバスで走りました。

こんなに暗いのにどうしてそんなに飛ばせる?とツッコみたくなるぐらい飛ばして到着したのは、やはり畑のど真ん中に建つホールにような建物。まだ真新しく、そして八王子芸術文化会館いちょうホールぐらい大きいです。造りはやや安っぽいですが。

ホールの前の駐車場にはこれだけ何もないところにどこから集まって来たのか、何十台というバスが停まっています。僕らが乗ってきたようなミニバスだけでなく、フルサイズの観光バスも十台以上ありました。

 

ぞろぞろとホールへ入って行く人の流れに乗って、中へ入ります。はぐれたら二度と自分たちのバスに戻れそうにないので、ここはみんな大人しく陳さんの後をついていきます。僕たちはホールの真ん中あたりに一塊になって座りました。

客席はどれぐらいあるんでしょうか、おそらく千はくだらないと思います。マジでどこからこれだけの人が湧いて出たのか不思議です。

 

しばらく待っていると、司会のお姉さんがステージに現れ満面の笑みで客席に何かさかんに説明しだします。もちろん僕には何を言っているのかさっぱりわかりません。

お姉さんが引っ込むと、舞台袖から女のコが数人走り出してきてショーが始まりました。

どうやら雑技ショーのようです。ジャグリングや、1台の自転車に10人以上が鈴なりになって走り回ったり、1人で10枚の皿を回しながら組体操みたいなポーズを決めたり、海老ぞって自分の股の間から顔を出してみたりと、どこかで見た感があるものばかりでしたが、ナマで観るとなかなか迫力があります。

客席は大ウケで演者が何か技を決めるたびに、やんやの大喝采が沸き起こります。

 

一通り雑技が終わると、客席が暗くなりました。どうやらトリの出し物が始まるようです。

スクリーンにドキュメンタリー調の映像が映され、シリアスなナレーションが流れます。相変わらず何を言っているのかわかりませんが、雰囲気を盛り上げるためかいちいち漢字のテロップがバーンと出るので何となく理解できました。

ざっくり言うとこんな感じのことを言っていたようです。

「十億人が驚愕!」「自然の摂理への反逆か?それとも人類の新しい形なのか?」

「その姿を本邦独占初公開!」「目を見開いて事実を見よ!」

音楽はどんどん大きくなり、否が応にも緊迫感MAⅩです。観客たちは何が出て来るんだろうと固唾をのんでステージを見守ります。

 

そして、音楽が止みライトがすべて消えました。次の瞬間、司会者の呼び込みとともにスポットが点灯し、現れたのは…………。

普通のニューハーフでした。

タイ的に言えばLB、しかも、めっちゃキレイというわけでもない仕上がりの人です。

ナナプラザだとカサノバあたりにいそう。オブセッションに行けばもっとキレイなコはごろごろしています。

 

しかし、中国人観客たちは大喜び。「あれが男?」みたいな感じでみなさんめちゃくちゃ興奮しています。もしかすると、この当時はまだ中国ではそういうのは珍しかったのかも知れません。

やがて、司会者が出て来て質問コーナーのようなものが始まりました。手を挙げて指名された人がステージに立ってニューハーフ嬢に質問をし、ステージを降りる際にはハグしてもらったり、ほっぺたにチューしてもらったりという〝ご褒美〟つきでした。

すると、黙っていられないのがデカパンさんこと崔さんです。

手を挙げて指名されると、ステージに上り、誇らしげに何やら演説をかまし始めます。

「私はウルムチからはるばる汽車に揺られてやって来ました。それは息子が海南大学で勉強をしていて会いに来たんです。その恩師ご夫妻に誘われて海南島の旅に来ています……」

何を言っているのかはわかりませんが、たぶんそんな内容なんだと思います。

そして、それがなぜか観客にめっちゃウケているのです。

ニューハーフ嬢に何の質問をしたのかよくわかりませんが、場が盛り上がったお礼なのか、崔さんは胸元にぎゅっと顔を埋めるハグをしてもらっていました。

何を見せられているんだろう、僕は……。

 

崔さんはホテルへ帰ってからもご機嫌でした。

僕が寝る用意をしているのを何か言いたそうにずっと見ています。

「何ですか?」

「いや、女性は必要ない? 若いから大変でしょ?」

「別に平気ですよ。それにこのへん、何もないでしょ?」

「必要だったら私が何とかしてあげるよ」

いや、地元の人ならともかく崔さんはこのあたりのことは右も左もわからない田舎者です。うっかり口車に乗るとロクなことにならないに決まってます。崔さん自身は悪気はないと思いますが、だからタチが悪いとも言えます。

「ありがとう。でも大丈夫ですよ」

僕は崔さんに背中を向けて眠りにつくのでした。

(続く)

 

 

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