翌朝日の午前中は「南山仏教文化苑」というところを観光しました。
ここは、まあひらたくいえば仏教関係の公園というか、テーマパークみたいなところで、広大な施設の中には高さ108mという巨大な観音像や、100㎏近い黄金を使って作られた「金玉観音」(名前が…)などなど盛りだくさんのアトラクション…もとい宗教施設を見ることができるのです。
その中にはかの鑑真が日本に渡航しようとして失敗し、この島に漂着したときに建立した南山寺もあります。なぜか地中海風の美しい庭園もありました。
中国人ってお寺が好きなのでしょうか。ツアー一行の中でも大学の先生夫婦やもう一組の老夫婦、そして崔さんあたりは目の色を変えてあちこち駆け回っています。
「はぐれないでくださあーい!」と、陳君が叫んでもお構いなしで、結局全体的には自由行動になっていました。
昼食は例によってツアー客御用達レストランで中華円卓を囲んでのお食事です。
相変わらずひっきりなしに団体客が訪れ、食べ、そしてバスに戻って行きます。
僕たちが席に着くやいなや、あらかじめ用意していたかのように(用意していたんでしょう)、大皿の料理が並べられます。
この日は前菜の盛り合わせ、マーボー豆腐、卵ときくらげの炒めもの、青菜の炒め物、イカのチリソース、白飯などでした。
美味しいんですよ、これが。しかし、旅行先でいただく食事としてはいかがなものなんでしょうか。近所の王将に来ているんじゃないんだから。
その点はツアーの皆さんもちょっと不満らしい。ガツガツ食べていますが、あまり笑顔はありません。
「海鮮料理が食べられるって聞いていたんだけど、海鮮は?」
崔さんはこういうときは黙っていられない男です。ウェイトレスのお姉さんに苦言を呈していました。
「イカがあるでしょ」と、素っ気なくイカチリの皿を指さすお姉さん。
ぐうの音もでない崔さんでした。
夕方、ついに島の反対側、三亜に到着しました。
ここの浜辺には有名な「天涯海角」があります。美しい砂浜に大小の奇岩が点在する浮世離れした光景は「天の果て、海の果て」と言われ、古代から清の時代まで政治犯の流刑地としても知られていました。宋の時代にはかの蘇東坡も流されて来たそうです。
中でも「天涯」「海角」と名付けられた二つの巨岩は、仇敵同士だった家族の反対を押し切って愛を貫いた男女の愛が化したという言い伝えがあり、カップルのデートスポットです。
しかし、ここも。
バスから降りるや否や襲いかかる土産物売りのおばちゃんの群れ。足を止めたら最後、捕まって商品を売りつけられるので、無視して足早に振り切らなければいけません。
しかし、このおばちゃんたち、これまでこの旅で現れた物売りの中でもかなりしつこく、屈強です。マジで走って逃げないと捕まりそうです。
「みなさあ~ん、走らないで!はぐれちゃいますよ~!」
これまで2日間、叫び続けた陳君の声はすでにかすれてかなりハスキーになっちゃっていました。
ふと、見ると土産物売りのおばちゃんに果敢に値引きを挑んだ結果なのでしょう、怒り狂ったおばちゃんの群れからいつまでも走って逃げている崔さんがいました。
ここでツアーのみなさんと別れ、僕は三亜市内のホテルへチェックイン。
今夜こそはパーッと遊んでやるぞと、荷物を置くと同時に街へ繰り出します。
しかし……海口と同じくここにも立ちんぼさんの姿はありません。
ここにも警察の取り締まりがあったのでしょうか。
ビールを買ってホテルの部屋で一人晩酌。
崔さんたちと一緒にいたほうが良かったのかも知れません。
(続く)
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