こげ茶色の液体が入ったグラスとハイネケンのボトルを手にノックがお尻を振り振り戻って来ました。その後ろからデブのオカマがついて来ます。どうやらこいつが〝ママ〟らしいけど。何となく貫禄的にはチーママっぽいです。
「なんていう名前のコ?」オカマのチーママはテーブルの前に仁王立ちしてやけに居丈高に聞いてきます。
「チェリーっていうんだけど……」
デカイ態度をされるとなぜか卑屈になってしまう僕です。
「チェリー?そんなオカマみたいな名前のコ、ここにはいないわよ!」
あんたもオカマだろ!と言いたくなるのをグッと吞み込みます。
「私にコーラ、奢るか?」
奢るわけないだろ、と思いつつ笑顔でかぶりを振ると、チーママは「フン!」と鼻を鳴らして再び奥に消えていきました。
シャーデー、いないのか……。
ゴーゴーの女のコはなかなかの早さで入れ替わります。僕のように年に3回程度しかこれない短期旅行者は、せっかくお気にが出来ても次に来たときに会える確率は、これまでの経験では低いです。
例えば、出会ってから3か月後だと70%ぐらい。6か月空くと40%、1年空くと20%ぐらいなのではないでしょうか。携帯番号を持っていれば率はもっと上がるのでしょうが、この当時はほとんどのゴゴ嬢は持っていません(たぶん)。
シャーデーに惹かれたのはどことなくこれまで会ったゴゴ嬢たちとは違う雰囲気を持っていたからなんです。どこが?と言われるとよく分からないんですが……。
(ああ、会いたかったなあ……)
そんなことを考え込んでどよ~んとなっていると、隣に座っていたノックに脇腹をつつかれました。
「知り合いのコ、いないの? だったら私が一緒にいてあげる」
まあ、それも悪くないかな。よく見るとノックもまあまあ可愛くなくもない。
気を取り直してステージ上のゴゴ嬢たちの肢体を肴に小一時間かけてハイネケンを3本ぐらい空けました。
すると、何やら入口のあたりが何やら騒がしい。誰かと誰かが揉み合っているようです。すると、次の瞬間、人垣をぶち破る勢いで店内に駆け込んで来た人影が。
「ゴーゴー!」
どすん!とそのダイナマイトバディで体当たりをかましてきたのはシャーデーでした。
彼女は図体がLB並みにデカイので、抱き着かれると技をかけられたみたいになります。不意をつかれているので完全に抑え込まれました。
「会えて嬉しい~~」
どうやら、オカマのチーママが知らないとは言ったものの、心当たりがあったらしく、連絡をしてくれたらしい。向こうの方でこちを見てニコニコしています。
僕はチーママも呼んで、シャーデーとノック、そして僕の4人で乾杯しました。
「今夜は一緒に帰る?」身体をもたせかけてとろんとした状態でシャーデーに聞かれました大きな瞳の奥に情欲の炎がちろちろと揺れています。エロいっす。
しかし、ここで僕は大事なことを思い出しました。現在の宿はゲストハウスで、そのへんのやり部屋ホテルよりも汚い部屋なんです。シャワー、トイレも共同だし。
これは連れて帰れない──。いや、連れ込めないことはないけど辞めておいたほうがいいかな。
以前、ヤリ部屋ホテルに用があってシャーデーと二人で立ち寄った際、彼女がものすごく拒否反応を見せていたのを思い出しました。
↓そのときのお話はこちら
(ホテルが汚い部屋だから今日は君を連れて帰りたくない)というのを説明するのにどれだけの時間がかかったでしょうか。
はじめはぶんむくれて暴れそうな勢いだったシャーデーですが、最後はノックやチーママも加わって説得してくれたおかげで、ようやく理解してくれたようです(たぶん)。
そんなわけで、明日店に迎えに来る約束をして、その晩は一人でカオサンへ帰ったのでした。
(続く)
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