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よるのたび バンコクナイト(5)蜜月


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パトゥムタニ県へ移転したそうです。

 

 

奇跡的に再会できた僕とシャーデー。

一度はあきらめかけていたので、彼女が入口の雑踏をかきわけて姿を現した瞬間はちょっと感動してしまいました。

しかし、せっかくの再会の夜に彼女をホテルの部屋へ連れて帰ることはできませんでした。

 

そのとき、僕が泊っていたのはカオサンの300Bの安ゲストハウスでした。いちおう個室ではありましたが、シャワー&トイレ共同で窓はないも同然。インテリアは完全に攫われてきた人が閉じ込められる部屋です。椅子と机がそう。

そんな部屋に女のコを連れ込むわけにはいきません。

SEXのあと、共同シャワーじゃないと汗を流せないなんてありえません。

その晩は泊まりに来るのが当然と思っているシャーデーに僕の部屋の事情をわかってもらうまでがひと苦労でした。

奥さんがいるからじゃないんだよ、というのを納得させるまでに怒り狂う彼女をどれだけなだめすかしたことやら。

 

次の日、ソッコーで荷造りをして件のゲストハウスをチェックアウト。

すぐ近所のカオサンにしては小ぎれいな『D&DINN』にチェックインします。

1泊800バーツでカオサンにしてはかなり良い部屋です。ベッドもWサイズだし、バスタブはありませんが、もちろんトイレとシャワーもついています。屋上にはプールまで付いていました。

当然大人気で、午前中にチェックアウトする客の後ろに並んで待っていないと泊まれません。たまたま前の日にそのことを知って、今朝は早起きして並びました。

 

その日から、シャーデーはお昼近くなると僕の部屋へやって来るようになりました。

ゴーゴーバーの呼び込みは最近やっていないようですが、昼間の仕事も今はないみたいです。僕ももちろんとくにすることはないので、することのない者どうし、カオサン通りの露店を冷やかしたり、裏路地のアクセサリー店を覗いたり、何もしてないくせにマッサージを受けにいったりして時間を潰しました。

もちろん、真昼間からホテルの部屋でやることをやったこともありました。

 

「動物園に行きたい」とシャーデーが言うので、ドゥシット動物園までタクシーで行きました。暑い日で、客は僕たち以外誰もいませんでした。

動物たちは皆暑さでぐったりしているか、見えない場所で涼んでいるのか、一見檻はからっぽになっているように見えました。

「ハロー」

生気がなくなっているチンパンジーに笑いかけるシャーデーこそが、今現在この動物園で一番元気な生き物だったに違いありません。僕も暑さですっかりやられていました。

動物園の横に池のある公園があり、小高い場所にある東屋で休みました。

日陰で涼みながらシャーデーの膝枕で少しうとうとしました。

「何やってんだろう……俺。」

ふと、そんな思いも頭をよぎりましたが、とにかく日陰の涼しさが気持ち良すぎて、そのまま眠りの中へ引きずり込まれていってしまいました。

幸せすぎる……。

 

 

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