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よるのたび バンコクナイト(11)わかれ


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イメージ画像

 

 

タイもそうですが、東南アジアの都市で昼間からうろうろ歩き回って観光するのは自殺行為です。

バンコクの場合、今さら観光する場所もないし夜の活動がメインなので、昼間はごろごろしているのですが、ここクアラルンプールで夜の活動って言ってもねえ。

まあ、飲むだけなら店には不自由しないんですが。

 

そんなわけで、結局昼間から出歩いてしまいます。今日もKL一の繁華街であるブキッ・ビンタンをうろうろしてフードコートでお昼を食べてきました。冷房があるところはともかく、そうでないところも多少歩くので、僕は汗だくでへろへろです。シャーデーはさすがに涼しい顔をしていますが、それでもじっとりと汗はかいているようです。

ホテルの部屋に戻るやいなやバスルームに飛び込んで熱いシャワーを浴びていると、シャーデーもすっぽんぽんの姿で入ってきます。

ボディーソープを手に取って背中を流してあげます。泡を伸ばす掌は肩から背中へ、そしてどんどん下がっていってお尻を、そして両脚の間をまさぐっていきます。

目を閉じたシャーデーの口からは切なげな吐息が漏れて………真昼間からそんなことばかりやっているうちに時は過ぎていきます。

そもそも滞在予定はなかったクアラルンプールにいつまでもいるわけには行きません。

 

「そろそろ移動しないと」とシャーデーに告げると案の定、「私も行く。シンガポールに行きたい」と言い出しました。

僕としては断る理由もそんなにないのですが、さすがにシャーデーとずっと一緒にいることに少し飽きていました。ずっと彼女のペースにつき合っていて、自分が歩きたいように街を歩けない感じが少し嫌になっていました。

こういうことを言うから、「薄情だ」とか「冷たい」とかよく怒られるんですよね。

もう一つモテないのはこういうところです、たぶん。

 

結局、何とか言いくるめてセントラルのバスターミナルでシャーデーはバンコク行き、僕はシンガポール行きにそれぞれ乗ることにしました。

時刻は夕刻。夕食を食べるときも会話ははずまず、重苦しい雰囲気でした。

やっぱり機嫌悪いです。

 

シャーデーのバスのほうが早く出るようなので見送ります。

最後までバンコクに帰るのを渋っていたシャーデーでした。バスのタラップを上っていくときも、目に涙を溜めながら何度もこちらを振り向きます。

そんな彼女を見ていると、さすがに物凄く悪いことをしてしまっているように感じて、僕も目頭が熱くなってきます。

席に着いても彼女は窓ガラスに貼りつくようにしてこちらを見ています。バスが動き出して、あっという間に姿が小さくなっても、彼女のシルエットはこちらを見続けているようでした。懸命に手を振る小さなシルエットが、最後に見た彼女の姿となりました。

 

約2か月後、旅の帰りにバンコクへ寄ったときはシャーデーは仕事でバングラデシュへ行っており、会うことはできませんでした。

日本へ帰ったあと、「I miss you」のメールが何度か届きましたが、いつの間にか音信は途絶えてしまいました。

あれから20年、今頃どうしているんでしょうかねえ。

 

 

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