地下鉄ノース・サウスラインのオーチャード駅から徒歩5分ほど。
ヒルトンホテルはす向かいのオーチャードタワーのバーに多国籍の夜の女たちがたむろしていると聞いてやってきた僕です。
「ニホンジン?」
ビルに入ろうとすると不意に、頭のうすい中国系のおっさんに呼び止められました。
「チュウゴクオンナ、いるよ。顔見る?」
いくら?と聞くと150シンガポールドル(約1万円)だと言います。
たしかゲイランの高いところがそれぐらいの相場だったような──悪い値段ではありません。でも……これ、ちょんの間だよね。
僕はバーに行きたいのだ。
買う気はありませんでしたが、高い、と言ってみました。
「高いないよ。ここはタイ女マレー女ばかり。よくない。キンパツ女、好きか?」
おっさんによると南米系やロシア人もいるらしい。
興味はありましたが、たぶん顔をみると断れなくなってしまう。
おっさんにまたね、と言ってビルの中に入ります。
ビルの中に入ると、 エスカレーターの周りにはチラシを持ったバーの従業員が何人も立っていて、さほどやる気もなく客を引いていました。
2階のエスカレーターを上がってすぐのところにある店、『イパネマ』。
とりあえず入ってみます。
入り口を入ると店内はかなり混雑しているかのように感じましたが、中央のカウンターとテーブルのところに人がかたまっているだけで、 隅のほうのカウンター席はけっこう空いていました。まだ時間が早いですから、こんなものでしょう。
店内の男女比は4:6といったところか。 男の客は7割が白人であとは東洋人。
ワイシャツ姿が多いのは、 観光客ではなくシンガポールで働いている連中だからでしょうか。
壁際にたむろしている女たちの品定めの視線を感じながらホールを抜け、 カウンターの隅へ腰を下ろして、 ハッピーアワー2杯12SGD也のタイガードラフトをちびちびやっておりました。
ちなみに今日の為替レートで1SGD(シンガポールドル)は約69円ってとこです。
つまり約800円。ハッピーアワーでこれって、あんまり安くはないですね、物価。
めぼしい女のコをチェックしたいところですが、女のコたちがたむろしている円形カウンターや壁際は、 遠いのと店の照明が暗いのとでよく見えません。
まあ初めてなんで遠くから静かにウォッチってことで。
どんな女のコがいて、客にどうアプローチしているのか。 客はどんなふうに女のコに接しているのか。とりあえずそのへんをじっくりと見極めたほうがいいでしょう。
っていうか、とりあえず一人で飲んだくれたいだけだったりして(笑)
女と酒を天秤に掛けると酒に傾いてしまう今日この頃です。
フロアのそこここではすでに欧米人の男連中と女のコたちが絡んでます。
騒ぐやつ、踊るやつ、抱きつくやつと、かなりいい感じに。
店内は女のコのほうが数が多くて、 あぶれた感じの女のコグループは隅のほうでダマになってたり、営業熱心なやつはフロアを回遊して連れがいない男に声をかけたりしてます。
「ハロー」
店内観察に余念がない僕の背後にも、 いつの間にかそんな影が忍び寄って来てました。
声をかけてきたのは、ルン22歳。白のノースリーブのワンピース姿がなかなか清楚なムードのコです。
「ニホンジンデスカー?」
けっこう日本語上手いかも。 ビールを一杯おごって、しばしお話してみます。
聞けば、お姉さんが日本人と結婚して埼玉に住んでいるらしい。
彼女はタイから出稼ぎでここに来ているとのことでした。
突っ込んでも吐きませんでしたが、 タニヤとかで働いていたぐらいの貫禄というかキャリアを感じます。下手をしたら日本へ出稼ぎ経験あるかも。
バンコクのテーメーあたりで会っていたら、 速攻キメてるくらいの美人だったのですが、せっかくシンガポールなんだし、タイ人はなあ。
とりあえず一球見送ることにします。一緒に外へ出ないかという彼女のお誘いを丁重に辞退しました。
その後、マレーとタイのハーフだという美女にも声をかけられましたが、 こちらも丁重にお引き取りを。
ちょっといい感じになってきたんで河岸を変えることにします。
エスカレーターを上がって、たしか4階あたり。
ネットでけっこうアツイ店として紹介されていた『クレイジー・ホース』へ。
確かに腹の底に響くような重低音の音楽がアツイ感じです。
(続く)
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