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よるのたび コルカタナイト(8)さよならコルカタ


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コルカタ・ハウラー駅(4travel.jpより)



 

店を出た僕は大きな敗北感に打ちひしがれていました。

トンデモな買い物をさせられることはわかっていたのに。

あれだけ何も買うものかと固く心に誓ったのに。

結局、軽く監禁状態にされたことで気弱になってしまい、約3万円のいらない買い物をする羽目になってしまいました。

あそこでもう少し戦えば。もう少し毅然と出来ていたならば。

いくらそんなことを思ってみても、しょせんたらればでしかありません。

僕は負けたのです。

 

「あなたはよい買い物をした。ビールを飲みに行きましょう」

とりあえずもうけが出たからか〝先生〟はご機嫌です。くそっ。

僕が黙り込んでいるので、ご機嫌をとろうと考えたのかも知れません。

僕たちは一軒のレストランに入りました。まあまあ高級っぽい店構えのところです。

ヒンズー教で飲酒を禁じているため、インドではバーなどの類いはほとんどありません。しかし、一部のレストランに行けばビールなどは出してします。イスラムの厳しい国と比べると多少はゆるい印象です。それでも酒を飲むことが文化になってないわけで、そういうところはやっぱり寂しいですね。

 

キングフィッシャーという国産ビールの大びんから〝先生〟は僕のコップへとビールを注ぎます。ハンプティとオジサン1、2号はコーラですが、〝先生〟とバカボンはビールを飲みます。不信心者どもが。

テーブルには次々に料理が並べられていきます。飲みっていうよりはやっぱりメシなんですよね。僕はビール飲みながらだとあまり食べられないので、鶏のソーセージっぽいものをたまにつまむ程度です。他の連中はガツガツと料理に食らいついています。

 

どうしたらこいつらと縁を切れるのだろうか。

これまでのパターンからすると、こいつらと一緒にいる限り自由に街を歩くことはできません。

しかし、ホテルにはいつも朝にはオジサン1号か2号が迎えに来ます。

一度、彼らが来る前に出かけてやろうとかなり早起きをしてみたのですが、それでもオジサンはホテルの前に来ていました。もしかするとホテルの前で寝泊まりしているのかも知れません。

ドゥルガー・プージャ以外、観光らしい観光はまだまったくしていないけど、コルカタから離れるしかないのでしょうか。いや、こいつらから離れられるならそれでも全然かまいません。

 

「僕は決めたんだけど」

料理と格闘中で心ここにあらずといった連中は僕の言葉にいっせいにこちらを向きました。

「そろそろこの街を旅立とうと思います」

 

「それは残念だ」

真っ先に口を開いたのはやはり〝先生〟でした。

「あなたはもっとこの街に滞在して見るべきものをみなければならない」

これ以上カモにされてたまるか。

「私には時間がない。休暇の時間は限られています」

少し押し問答になりましたが、いちおう〝先生〟は納得したようでした。

 

翌朝、オジサン1号と2号を左右に従えて、僕は駅に切符を買いに行きました。

ついてこなくてもいい、と言ったのですが、本当に切符を買うのか確認したかったのでしょう。仮に僕が嘘をついて彼らから離れた状態でコルカタに留まり続けるといろいろ具合が悪いと見えます。

案の定、切符を買うために駅のあちこちをうろうろする間、オジサン1、2号はまったく役に立ちませんでした。ホントいないほうがマシってやつです。

 

夜発の切符が買えたので、一度ホテルへ戻り、荷造りをしてチェックアウトします。

このときには〝先生〟以下全員集合しており、お別れのセレモニーがあります。

「あなたとの友情は忘れない」

手を差し出し、力強く握手をする〝先生〟。バカボンやハンプティ、オジサンまでが口々に別れの言葉を言ってくれます。

「あなたとの記念に何か欲しい」オジサン1号が言うので、壊れたボールペンをあげました。それでもオジサンはうれしそうです。汚くてバカだけど悪いやつではない。

「これに日本語で何か書いてくれないか」バカボンがノートを差し出します。

 

こいつらには不快な思いをたくさんさせられたけど、思い出はキレイにしておくか。

ノートを手に取った僕は最初、こう書きました。

 

あなたたちと過ごした数日間は貴重な思い出になりました。ドゥルガー・プージャを観に行ったり、ビリヤニの美味しい店を紹介してくれたり、家にご飯に招待してくれたこともありました……〟

そこまで書いて、もしかしてこれ日本人のカモを捕まえるのに使うのかもと、ふと思い、後半にはこう書き足しました。

 

……でも、それは土産物屋に連れ込んで高い買い物をさせるためだったんです。

この文章を見せられた方へ

こいつらは悪い連中です。絶対についていってはいけません!

もし、あなたが旅の思い出をさんざんなものにしたくなければ。〟

 

ノートを手渡すとバカボンはしてやったり、という感じでにやにやしていました。

それをカモに見せて逃がしてしまえばいい。

少しだけ、むしゃくしゃがおさまりました。

僕は手を振る彼らに別れを告げ、駅に向かうタクシーに乗り込みました。

(続く)

 

 

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