翌朝、山男は次の目的地へと旅立って行きました。
大学生はゲストハウス周辺でのんびり過ごすと言うので、僕は一人でアルゲ・バム観光へ出かけます。
アルゲ・バムがあるのは町の郊外2~3㎞ほどの場所で、歩くと30分ぐらいです。暑いとかなりキツそうですが、もうけっこう涼しい時分になっていたので、さほどでもありませんでした。ただ、陽射しはやっぱり肌を刺すような強さです。
門の横に掘っ立て小屋のようなチケット売り場があり、チケットを買って城門の中に入ります。
門の中には藁と泥と砂で作られた茶色一色の町が見渡す限り広がっています。
町全体が埴輪のようです。1722年にアフガン人の侵攻によって放棄され、以来廃墟となったこの町は、長年風雨にさらされ、はっきり言って崩れかけています。
家のような建物も壁に少し触っただけで、ボロボロと崩れるのです。城門内には観光客の姿もほとんどありません。これ、ストレス発散に家一軒ぐらい破壊してもたぶんバレないぞ(笑)
さすがに最近になってイラン政府が修復作業を始めたようですが、あまりにキレイに直しすぎて世界中から怒られたらしい。
ともかく、見た目はナニですが、年月の流れと人の日々の営みの儚さを感じさせてくれるそれはなかなか見ごたえのあるものでした。
実は僕が訪れた翌年の03年、アルゲ・バムは地震でほぼ全壊してしまいます。しかし、世界遺産に指定されたのをきっかけに本格的に修復が進み、今ではかなりキレイに復元されているようです。
午後にゲストハウスに戻ると、ファランのカップルが同室にチェックインしていました。さっそく自己紹介を兼ねて少しおしゃべりをします。
男のほうはフランス人。もじゃもじゃ頭でちょっととりすました感じが鼻につく感じのやつです。年の頃は20代前半でしょうか。
女のほうはベルギー人で大学生だそうです。男のほうとは対照的にこちらはえらく愛想がいい。小柄でカワイイ系の金髪ガールです。僕が拙い英語で話しても、はじけるような笑顔できちんとリアクションしてくれます。
そのうち、大学生も帰って来て自己紹介を始めました。こいつ、どうやら東大生みたいです。僕や山男には言わなかったくせに。
フランス人は大学生が東大生だというところに食いついたようで、「僕はフランス2部リーグでサッカーをやっているんだ」などと、こちらも僕が聞いていなかったプロフィールを公表し出して、それにさらに東大生が食いついて二人で盛り上がり始めました。
その夜は宿のオーナーが自宅へ食事に招待してくれたので、4人で徒歩10分ほどの場所にあるオーナー宅へ行きました。
オーナー宅は高い塀に囲まれたなかなかの豪邸で、僕たち4人は床に置かれたトレイの各々盛られた料理を床に直で座っていただきました。ここでも盛り上がっているのはフランス人と東大生の2人で、僕とベルギー娘は聞き役に回っていました。
夕食を食べるとドミトリーにはテレビもなく、あとは寝るぐらいしかすることがありません。昼間、歩き通しだったこともあって僕はベッドに入ると早々に寝入ってしまいました。
慣れない時間に寝ると、夜中に目が覚めてしまったりするものです。
案の定、真夜中に目が覚めてしまいました。
(まいったな…すぐには寝られそうにないな)と思っていると、不審な物音が足元のほうからするのに気がつきました。ベルギー娘のベッドのほうです。
この部屋は四方の壁に沿って1台ずつベッドが置かれており、計4台、定員4人です。
僕の頭のほうに東大生、対面がフランス人という配置でした。
物音のするほうを見ると、まさにフランス人がベルギー娘の上に乗っかって、いたしている最中でした。落ち着いて聞くと必死に押し殺すような喘ぎ声もします。しかも男女両方w
こちらから見ると裸のフランス人の背中が前後に動く様子しか見えませんが、やっぱりアレそのもののシーンは心穏やかに見られるものではありません。
それが一段落するまでの間、僕はもちろん眠ることができず、ずっと観覧する羽目になってしまったのでした。
(続く)
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