思えば、日本を発ったのは夏休みでした。
主に秋の間ずっと旅をしてきたわけです。しかし、その秋もそろそろ終わりに近づいているようです。
イランの国境をバスで越えて、テヘランから1泊2日、
エルズルムからバスでさらに北上して、トラブゾンという街へ向かいます。
なぜ、この街に行こうとしたかというと。
黒海に面したこの港町は旧ソ連諸国の人たちの出稼ぎの街のようです。
従って、娼婦やマフィアも流れ込んでくる、とか。 そういった楽しげな情報をネットで仕入れていたこともあり。
付け加えると、沢木耕太郎の『深夜特急』にも登場する場所です。
ぶっちゃけ、一気にイスタンブールまでトルコ横断しちゃうのがちょっと味気なく感じたというだけで、
パキスタン、イランとなかなかお酒を飲めない国で禁酒してきたので、ゆるいトルコなら飲めそうだし。ただし東部はそうでもないという話も聞きますが。
バスターミナルから町の中心部までけっこう距離があったので、乗り合いタクシーで行きました。
たどり着いた町のへそにあたるアタテュルク広場。
たとえとしては雑ですが、ハチ公前みたいな広場を中心に、
近距離バスとか乗り合いタクシーのターミナル、町役場、モスク等がならんでます。
どことなくこじんまりした感じなのは高いビルがないせいか。
広場から放射状に広がる道には商店が軒を連ねていて、賑やかです。
商店のショーウィンドウには、 ユーロなデザインの洋服や靴が競うように飾り立てられていて。
なぜだか微妙にカッコ悪いブルゾンばかりが店先にたくさんぶら下がってるイランとはかなり趣が違います。
わかりやすく言うと、「あか抜けてる」?
イラン関係の人が、これ読んでいたらすみません。 読んでるわけないと思うけど。
アタテュルク広場を起点に宿を探します。
ガイドブック情報では、この街はサンタマリア教会が1泊3USドルで泊めてくれて、 日本人貧乏旅行者には人気だとのこと。
しかし、教会なので当然ながら禁酒禁煙、さらに門限付きとのこと。
もちろんそんなところにやっかいになる気はありません。
とりあえず、イランで日本人旅行者に教えてもらった『ユヴァン』というホテルを目指します。
広場から北東に5分ほど歩いた場所で、その看板を見つけました。
さっそくドアを開けて中へ。 しかし、次の瞬間僕は目を疑いました。そこにはテーブル席とバーカウンターがあるだけで、ホテルのレセプションのようなものがどこにも見当たらないのです。
(えっ、ここホテル?)「???」
どう見てもただの食堂です。いや、雰囲気を見ると飲み屋に近い。
店内では4,5人の男女が真っ昼間からカウンターで盛り上がっていた様子でしたが、
ドアを開けた途端、一斉にこちらを見るのです。
全員の視線が突き刺さります。
(続く)