「ガチャッ、……はろぉ~~?」
……えっ、出たよ。なんで?
ダメ元でかけた携帯電話。しかし、意外にも通じてしまいました。
この間のびしたゆるーい感じのしゃべり方は確かに彼女です。
しかし、なぜ今バンコクに? シンガポールにいるんじゃないの?
そう、ミシェルです。シンガポールのクレイジーホースで会って1泊約1800円のゲストハウスに連れ込んだ彼女です。彼女はタイから出稼ぎに来ていたのですが、まだしばらくはシンガポールにいるって言っていたはず。
↓ミシェルに関するお話はこちら
「ゴーゴーだけど。覚えている?」
「覚えてる~♡ タイに来たの~?」
「ミシェルも今はタイにいるんだ?」
「そぉなの~。パッポンにいるから来て~♡」
せっかくナナに宿をとったんだけどなあ。
しかし、ミシェルの誘いとあらば仕方ありません。鶴田真由を長身ナイスバディにしたような美女でしたから。会えるものならぜひまた会いたい。
そんなわけで、夕刻になるといそいそとBTSで出かけていく僕です。
『King's Corner』のステージトップで踊っているミシェルはすぐにわかりました。
長身でスタイルもいいので、ゴゴ嬢たちの群れの中にいてもひときわ目立っています。
それぐらいいろいろなサイズが違うんです。
踊っている彼女と目が合うと、彼女はにっこり微笑んで僕の席を、そして続いて自分を指さして口をぱくぱくさせています。まあ、隣に座らせろってことでしょう。
僕が手招きすると、パッと花がほころぶような笑顔を咲かせながらステージから飛び降ります。そしていったん奥に引っ込んだと思うと、自分のドリンクと伝票を手にしてやってきました。
「シンガポールにいたんじゃないの?」
さっそくどうしてここにいるのか、聞いてみました。
「シンガポールは~、あまりお客さんいなくて~」
よくよく聞いてみると、僕と別れて1週間ほどでバンコクに戻っていたようです。
それでパッポンで働いていた、と。
「もうMPでは働かないんだ?」
たしかシンガポールの前は彼女はMPで働いていたと言っていたはずです。
「MPは若いコばかりなのぉ~」
とはいえ、彼女も20代前半じゃなかったっけ?MPってそんなに若いコばっかりなのかなあ?ゴーゴーも似たような感じな気がするけどな。
「今日はロイカトンなのよ」
店のママらしきおばちゃんがホールケーキのようなものを持って僕たちの席にやって来ました。
「ロイカトンってなに?」
「タイのお祭りよ。これを水辺に流すの。二人で行って来たら?」
おばちゃんが持っていた6号サイズのホールケーキのような物体は花や葉っぱ、ローソクなどで飾られていました。これ、灯篭流しの灯篭ってことだよね?ぜんぜん灯篭の作りをしていないけど。
「ふーん。ミシェル、行く?」
「行く~~♡」にっこりと、ほんとに無邪気な女のコのようにミシェルは笑います。
これ、絶対みんなやられるやつだ。
「じゃあ、行って来ようかな…」
すると、おばちゃんの眼光が鋭く光りました。
「じゃあ、1000バーツ、ペイバー500と灯篭代500ね」
くそっ、金取るんかい。
とりあえず着替えてきたミシェルと店を出ます。
(続く)
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