ナナプラザを出てスクンビット通り沿いにある一軒家のバーに入ります。
ここにはビリヤード台が3台ほど置いてあって、ちょうど1台が空いていました。
僕とナン、ノイ、オーちゃんの4人でゲームをしましたが、僕もはっきりいって上手くはないし、みんなどっこいどっこいの腕前でした。まあ、ゲームとしてはそこそこ盛り上がります。
ナンには一昨日にもせがまれてビリヤードを一緒にやっていますが、そんなに好きなわりには彼女もあまり上手ではありません。
何ゲームかやって、僕かノイが勝つことが多かったように思います。
ふと、気づくとナンがいなくなっていました。
ゲームとゲームの間にどこかへ行ってしまったみたいです。
トイレにでも行ったのだろうと僕はとくに気にすることもなく、そのまま何ゲームか続けていました。
煙草が吸いたくなったので、ゲームが終わったタイミングでノイたちに声をかけて外に出ました。
店は通りから少し引っ込んでおり、車の騒音などもあまり聞こえてきません。入口には照明がありますが、少し離れると真っ暗でした。
暗闇の中で煙草をふかしていると、後ろのほうからぼそぼそと人が話すような声が聞こえてきます。
こんなところで誰だろうとあたりを見回すと建物の陰に人がいるようです。興味本位で音を立てないように近づいて覗き込むと、ナンの後ろ姿が暗がりの中にありました。
どうやら誰かと携帯で話しているようです。
何を言っているのかはさっぱり聞こえませんが、声のトーンからするとあまり楽しい話ではなさそうな感じでした。心なしか彼女の後姿も心細げに見えてしまいます。
(これはたぶん見てはいけないやつだな……) 彼女が僕に気づいていない様子だったのを幸いに僕は再び足音を立てないようにしてその場所から離れ、再び店に戻りました。
3人でゲームを再開して、しばらくたったころにナンは戻ってきました。
「どうかしたの? 誰?」と聞いてみましたが、
「ううん、何も。弟よ」と少しだけ口角をあげて微笑んで見せるだけでした。
しかし明らかにどうかした感じで、これ以上は聞かないでオーラが彼女からビンビンに出ていたので、それ以上詳しい話を聞くことはできなかったです。
さらに何ゲームか4人で遊んだところでお開きになりました。
まだ12時前でしたが、夕方から遊びっぱなしなのでけっこうみんなお腹いっぱいな感じです。まあノイとオーちゃんに関してはリアルの腹は減っているかも知らんけど。
お会計を済ませて外に出ようとすると、ノイが僕のところへ寄ってきて囁きます。
「ナン、疲れているみたいだから連れて帰ってあげて」
ふだんは自分の欲望にのみ従って行動する彼女が珍しくまともなこと言います。
まだ店の奥にいたナンを見てみます。
ずっとビールを飲み続けていたせいか、ナンは少し酔っているみたいです。
まあ他に女がいるわけでもなし、断る理由もないので2日ぶりに彼女をホテルに連れて帰ることにしました。
ノイおばさんは何か知っているのでしょうか。
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