11年年末の訪タイです。
この頃はナナプラザだけでなく、その前にソイカに立ち寄るというパターンが定着していました。とくに必ず立ち寄っていたのは『Baccara』です。
この当時の『Baccara』は全盛期で、時間帯によっては入れないこともしばしばでした。
店員もいちいち席まで案内してくれないことが多く、大混雑の中で席を探してそれでも見つからずにあきらめるということも。
この日はそれほど混んではいませんでしたが、職場の後輩のMくんNくんと合流してテラスのバービアで飲んでいました。
「最近なんかエマのやつがウザいんですよ~」
愚痴っているのはMくんです。エマというのは『Spice Girls』のコヨーテで童顔なのにダイナマイトバディの人気嬢です。そもそも僕が密かに狙っていました。しかし前回の訪タイのときに彼らを店に連れて行ったら仲良くなって閉店後にNくんとエマの友達の4人でクラブに遊びに行って、さらに仲良くなってしまったようでした。
ちなみに彼らがクラブに行っていたころ、僕はR3で飲み過ぎてつぶれていました。
以来、どちらかというとエマのほうがMくんにご執心だったみたいです。
うらやましすぎる。
「この間は妊娠したとか言い出すし。ウソだったんですけどね」
Mくんはイラついた様子で煙草の煙をぶはっと吐きだして吸い殻をぐりぐりと灰皿に押し付けます。現在では電話もLINEも無視しているのだとか。
「だから僕、今『Spice Girls』の前を通れないんですよ~」
知らんがな。
だいたいここのテラス席、『Spice Girls』の店先から見えてなくもないし。
距離は少しありますが、何かの用でエマがここの前を通り過ぎたら即、詰みます。
2人と別れて、モテるやつはモテるんだよなあ、と少し鬱になりながらナナプラザへ。
僕もたまには飲んだくれるだけでなく、可愛いコと色恋沙汰してみたいです。
しかし、行きつく先はR3。
ここに色恋はたぶんないです。最近仲の良いゴゴ嬢はジーンだけですし、彼女は魅力的だけどなんかそんな感じではありません。
「ハロー。サバイマイ?」
やってきたのは昨日会ったばかりのフォンでした。
隣に座るように手でシートをぽんぽんと叩くとワイをしてちょこんと腰かけます。
「店には慣れた?」と聞くと、
「まだ……お客さんに慣れなくて……」
ペイバーもまだ2~3回しかされていないみたいです。
フォンは自分からペラペラ話すほうではありませんが、カタコト英語&タイ語で話は通じるし、何か聞くとちゃんとした答えがかえってきます。
以前は地元で販売員をしていたそうですが、外人の男性にここのような濃いめの接客するようなことは初めてで、戸惑っているそうです。
フォンと話し込んでいると不意に嫌な気配がしました。
顔をあげるとおばさんが腰に手を当てて僕たちの席の前に仁王立ちしています。
顎をくいっくいっとしゃくって無言であれを催促しているのです。
うわあ、きたよ。
しばらく遠ざかっていたじゃんけんゲームです。
おばさんの言うことは絶対です。やらないわけにはいきません。
「あんたもやるんだよ」そんな感じでフォンも巻き込まれてしまいました。
それがまさかあんな展開になるとは。
そのときの僕はまったく予想していませんでした。
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