宿でたまたま声をかけてきたイケメン日本人2人が飛び入りで参加して、ますます宴会は盛り上がってきました。
彼らは学生で夏休みを利用してタイを回っている途中だそうです。
「ゴーゴーさんはこっちに住んでいるんですか」
町田啓太似イケメン2人のうち短髪のほうが尋ねてきました。
ずっと顔を合わせていると見分けがつくのですが、ここでは町田啓太短髪と長髪で書くことにします。ちなみに2人は親戚でもなんでもない赤の他人同士だそうです。
「いや、僕も旅行者だよ」
「そうなんですか? てっきりこっちで結婚している人なのかなあって」
20代~40代のタイ人女性(彼らの中でヤムは女性にカウントされていなさそうですが)と40代の日本人のおっさん。家族連れには見えないでしょうけど、奥さんとその友人という組み合わせならアリですね。
お金持ち日本人が愛人たちを侍らせているようには見えないのが残念です。
「あ、この人たち僕がよく行くゴーゴーバーの従業員」
正確には現役の従業員はミスレジスターだけですが、店きっかけのつながりであることは間違いないので嘘ってわけでもありません。
「えっ」
町田啓太たち、〝ゴーゴーバー〟と聞いてちょっとドキッとしたようです。
何気ない様子でミスレジスター、ミン、ジェーンを値踏みするような目で見ているのがわかります。妄想膨らませてますね。
そんな町田啓太Sの態度の変化を察してか、ジェーンは身体をもじもじしながら誘うような目で彼らの顔を代わる代わる見てからかっています。さすが元ゴゴ嬢。
やがて彼らは店のあるところへ行ってみますと言って、出ていきました。
僕たちもそろそろ料理がなくなってきたので、いったんお開きにしました。
宴会のあとを片付けて、その後はミスレジスターたちの部屋で飲みなおしました。
僕の部屋と広さは同じですが、女性4名はみんなこちらで寝るようです。
ヤムもいちおうこっちでした。やっぱり僕と2人一緒というのはまずいみたいです。
4人ぶんの荷物とベッド代わりに敷かれたマットで部屋の床は見えない状態になっており、タコ部屋さながらでした。
そんなところでトランプをして盛り上がるという、何だか修学旅行みたいなノリ。
負けたら酒を一気しなければいけないルールは店にいるのと同じですけど。
正確な時間は覚えていませんが、夜中の2~3時ぐらいまで飲んだと思います。
そしてわいわい騒いでいる最中にいつの間にかジェーンがいなくなっていたのですが、僕はとくに気にも留めていませんでした。
でも、少し考えれば変なんですよね。周りは真っ暗でどこも行くところなんてないんですから。
翌朝、まだ酒が残っている頭でボーッとテラスに座っていると、女子部屋とは反対の方向からジェーンが歩いて来ました。
「おはよう。散歩でもしていたの?」と聞くと、彼女はシーッと人差し指を唇に当てて見せました。
「えっ?」僕が怪訝な表情をすると、彼女は黙ったまま背後のコテージを指さして意味ありげにニヤニヤしてみせるのです。
彼女の背後のコテージ……たしか町田啓太たちの部屋です。
えっ、そういうことなの? でも彼らは2人で1つの部屋に泊まっていたはず。
まさか……。
僕は「2」と指で示してから縦にした右拳を左の手のひらにパンパンと叩きつけるジェスチャーをしてみました。
すると彼女は誇らしげにサムアップしてニヤリ、としてみせたのです。
後でヤムに聞いたところでは、ジェーンのファラン夫はかなりの高齢で、もはやあっちのほうはほぼほぼないのだそうです。
欲求不満が溜まっていたところに、久しぶりに若くてイイ男を見たので食ってしまったと言っていたそうな。
いえね、僕はそんなやらしいことするつもりで来ていないけれども。
でも他人がそういうことをしたと聞くと、やっぱりもやもやしてしまいます。
ジェーン、めっちゃいいオンナだし。
お金払ってもお願いしたいくらいなのに。
町田啓太たちも、僕が間抜けにトランプして酒飲んでいる間にそんなにいい思いをしやがって。
帰りのフェリーでも、バリハイでみんなと別れてホテルに戻る間も、僕はもやもやしっぱなしでした。
結局、ラン島は女だらけのハーレムツアーだと思いきや、いい思いをしたのは逆ハーレムを堪能したジェーンだけだったのでした。
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