↑のゴーゴーバー画像は本文とはまったく関係ありません。
00年代の「大人のパーティ」に関するお話です。
アンザイさんを迎えに来たリョーくんでしたが、いつもとちょっと様子が違いました。
そもそもリョーくんは20歳そこそこのイケメンです。
イケメンにもいろいろいるかと思いますが、彼の場合は女装もイケそうないわゆる典型的な美男子ってやつです。
ふだんパーティの手伝いに来るときは、ちょっと水商売っぽい感じのスーツ姿。
明るく軽いノリで、とりあえずそのば場が盛り上がればいいやというチャラいキャラの青年でした。
ただ明るくて愛想はいいんだけど、全部嘘っぽいというか陰で何を言ってるかわからない感じはあります。正直僕はあまり彼は虫が好かない感じはありました。
ところが、いつもキラキラのはずのリョーくんがその日はめちゃめちゃどんよりとしていたのです。ストレートに言えば小汚いレベル。
上下はよれよれのスウェットで、いたるところに謎のシミがついているのがこの距離からでもわかります。いつもカッチリとジェルで固めている長髪もボサボサ。口の周りにはうっすらと無精ひげが生えています。
キレイな顔が台無しです。
何より異様だったのは目つきでした。いつもはキラキラなのにこの日はやけにギラギラとしていて、僕らと目が合ってもまるで見えていないかのように挨拶すらしません。
「あ、リョーくん来てくれたんだ、ありがとうねー」
その場にいた全員がリョーくんの異様さにドン引きしているのを察してか、アンザイさんがわざとらしく大声を出して駆け寄ります。
そこで僕たちはまったく予想していなかった光景を目の当たりにするのです。
なんとリョーくんは駆け寄ってきたアンザイさんの横っ面を思い切りグーで張り倒したのです。
鮮やかな右フックが決まり、あまりの勢いにアンザイさんの小柄な体は地面に叩きつけられてバウンドしたかのように見えました。
「ちょっと!」
僕はアンザイさんに駆け寄って抱き起こします。
声一つ出さずに目をギラつかせたまま、なおもアンザイさんに襲い掛かろうとするリョーくんを別のガタイのいい男性会員が羽交い絞めにして止めます。
「いいから!」大声を張り上げたのはアンザイさんでした。
「大丈夫だから! リョーくんも、ね? もう帰るから……お願い」
リョーくんはまだジタバタしていましたが、結局男2人がかりでタクシーの後部座席へ押し込まれました。
「悪いけど、荷物積んでくれる?」
口の中を切ったのか、アンザイさんは血を流していましたが、何事もなかったかのように僕たちに言いました。
結局、荷物はタクシーのトランクに押し込んで、アンザイさんと女のコ1人もタクシーに乗り込んで帰っていったのです。
残された僕と2人の男性会員はあまりの出来事にしばらく言葉が出ませんでした。
「アンザイさんとリョーくんってデキてたんだ?」
とガタイのいい男性会員。
「いや、僕も知りませんでした。リョーくんってあんなキャラでしたっけ?」
と、僕が言うともう1人いた常連のおじさんが重い口を開きます。
「俺、アンザイから聞いてたんだけどさ、あいつかなりタチ悪いみたいでさあ」
この人はとくにアンザイさんと仲が良くてプライベートでもよく会っていました。
てっきり僕らはこのおじさんがアンザイさんと出来ていると思っていたんですが。
「元はホストみたいなことやってたらしいけど、アンザイのとこに転がり込んでから全然働かなくなったって愚痴ってたよ。変なクスリもやってるかも知れない……」
僕がリョーくんとは僕がパーティに入ったころからの顔見知りでしたが、僕がリョーくんを見たのはそれが最後になりました。
なかなか波乱万丈な人生を生きているアンザイさんです。
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