市野澤潤平氏著『ゴーゴーバーの経営人類学』の内容をときどき感想などもはさみつつ紹介しています。
ゴーゴーバーではお客は気に入ったコがいたら自分の席に呼んで、まず会話などを楽しみます。
ゴゴ嬢たちは片言の英語や日本語、ときにはタイ語の会話でお客を楽しませ、より自分を気に入ってもらってドリンクやあわよくばペイバーしてもらうべく手練手管を尽くすのです。何もしないのもいますけど。
このときの会話は自分をより好印象に見せるアピール以外に、情報収集のためでもあるのだと市野澤先生は『ゴー経』で書いています。
「where you from?」ゴゴ嬢との会話はだいたいこんな感じから始まります。
まず年齢・職業・出身地やタイに来た目的、旅行者の場合は滞在期間など、会話をふくらませて相手の好みや性格、財布の中身を把握することが、ゴゴ嬢にとって取引を成功に導くためには欠かせないからです。
経験を積んだゴゴ嬢であれば、相手の国籍や年齢、見た目である程度懐具合を判断できます。しかし、それはあくまで目安。
直接の対話で得た情報で判断したほうがまだ正確なのです。
このように、ゴゴ嬢と初見の客との取引は、「バザール」での取引以上に不確実性に満ちています。無防備に初見の客をとったら、その先にどのような結末が待っているかわかったものではないのです。
エリック・コーエンさんという社会学者の先生によれば、お客と直で商売をしているセックスワーカーは次の3つのリスクに直面しているそうです。
1.不払いなど物質的損失の危険
2.暴力などによる身体的な危険
3.性感染症などの健康面での危険
市野澤先生のフィールドワークから実際にどのようなリスクがあるのかという1例を見てみましょう。基本は本文の引用ですが多少修整しています。
【ケース1】
ケーンはナナプラザ2階のゴーゴーでダンサーとして働いている。
東北出身、20代後半で容姿は普通だが〝控えめな愛想の良さ〟でまあまあお客はついている。英語が少し喋れるので、観光ガイド役で客にオフされることが多く、店で盛り上がって一緒にディスコに行くこともしばしば。
デートが終わると客のホテルやアパートまでついて行くが、自分からSEXを切り出すことはない。ストレートに商談に持ち込むと、嫌な顔をする客がいるからだ。もちろん客のほうから切り出してきたときは素直に応じる。
客とのSEXが終わった後に、いつもケーンは報酬を要求することにしている。事前に支払額を確認している場合は問題ないが、そうでない場合はタクシー代として現金を要求する。お客が察してくれると期待しての行動で最低1500バーツぐらいはくれるだろうという計算。しかし、中には本当にタクシー代の100バーツしかくれない客もいる。
そんなときにはケーンは自分がいかにサービスをしたかを強調してその金額では不十分だと主張する。それでも、カネがないといって払ってもらえない場合もある。
そういった客は20代の若者に多いとケーンは言い、だから自分は中高年の紳士のほうが好きなのだという。
他に困った客としては、いきなり肛門性交を挑んでくる初老の日本人や、スパンキング好きのファランなどがいた。スパンキングには割増料金で応じたものの、思ったよりもハードで、しばらくの間お尻がヒリヒリしていた。わずかな割増料金ではわりに合わないと彼女は言った。
お客の立場からすれば、ケーンのやり方のように事前にお金のことを話していないと、「俺に惚れたからだと思った」と言う人が多そうです。
そんなわけないですけどねw
最近たまたま見たタイブログでは、ブログ主が呼び込みのコにお店で誘われたそうです。逆ナンだと思って喜んで営業終了後に待合せて、することをしたのですが最後にお金を請求されて「騙された!」と怒っていました。
うーん。僕もそう思ってしまいそうな(^^;
タイに通い始めでゴゴ嬢たちについてあまり知らなかった場合なんかは、ホントにタクシー代100バーツだけしか渡さない気がします。
でも、いきなりお金の話をされても、そういうものだという認識があればいいですけど、そうでなければテンション下がってしまうのも事実で。
そういうふうにお客の機嫌を損ねてしまうことはゴゴ嬢にとって怖く感じてしまうことだというのも一理あります。
ゴゴ嬢もなかなか大変なお仕事なのです。
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