市野澤潤平氏著『ゴーゴーバーの経営人類学』の内容をときどき感想などもはさみつつ紹介しています。
仲良くなった男性客から(ひどい場合は仲良くない場合でも)、いろんな言い訳で現金を引き出そうとするゴゴ嬢の手口。
今回はそのケーススタディです。
【ケース4】
ヌウは24歳、東北のローイエット出身だ。ラチャダーの美容院からナナプラザのゴーゴーに転職して3年になる。
ヌウはディスコとビリヤードが大好きで、店を訪れるファランを誘っては遊びに行っていた。そんな付き合いの良さから多くの固定客を持っていた。
その一部はバンコク在住の男性だったが、アメリカやヨーロッパから数か月に一度訪れる客も多いようだった。ヌウは面倒見が良く、そういった客は(他の客とバッティングしないかぎり)自分のアパートに泊めたり、数日間ペイバーしてもらって旅行に出ることもあった。もちろん観光ガイドを兼ねている。
そんなヌウにはある行動パターンがあった。それは帰国直前の男性客に〝借金〟を申し込むことだ。口実は決まっていて「ローイエットの実家に帰るからまとまった金がいる」というものだった。請求額は2000~3000バーツ、多いときで5000バーツだという。
その際には客がいくらかタイ語がわかる相手だと友人に電話をかけさせ、実家で問題が起こっているかのように演じるという〝偽装工作〟をすることもあった。
また、とくに親しい間柄にある客には小細工をせずに素直に「田舎でゆっくりしたい」と言うらしい。
さらに、交通費がいくら、土産代がいくら、というふうに出費の根拠を事細かく説明するので、多くの客は断れなかったようだ。おまけにそれまで何日か一緒に過ごしているので懐具合は知られている。また、ヌウはあくまでも友達として助けを求めるというスタンスで頼むので無下に断ることもできない。
ヌウの試みはかなりの率で成功したようだ。著者はファランの客がヌウに追い込まれていく様子を何度か目撃したという。もちろんヌウはこの〝借金〟を返すつもりなどない。うやむやになるのを狙って、帰国直前に申し込むのだ。要求する額も、相手にとってあきらめのつくような額だったので、それで関係が切れるということは少ないようだった。
そんなリピーターの中で熱心な英国人男性がいて、2人は結婚することになった。
2人はイギリスで結婚式を挙げた後、男性がバンコクで働く、という話だったが、イギリスに渡ったあと、著者は彼女に会うことはなかったという。
なんかラストの中途半端な感じがちょっと気になりました。
これ、イギリスで結婚すると言って実は売り飛ばされたってオチじゃないですよね?w
しかしヌウさん、かなりスマートなやり方です。
ここまで周到でなくとも、ゴゴ嬢が時間をかけてお客からの好意や信頼関係を築くことができれば、「家族は怪我をした」などの理由で数万バーツのお金を引き出す例もあります。
究極的にはその男性と結婚して、さらに多額のお金を手にする可能性すらあります。
しかし、客だってバカではないので、そんなレベルまでいく場合はバーガールの能力や努力だけでできる技ではないでしょう。ましてや結婚なんて、そんな損得ずくばかりでできるものではないでしょう。
男女の相性も大いに関係するのではないでしょうか。それをラブともいいますがw
アメリカの経済学者・コーエンさんによると、バンコク中心部で外国人を相手にするセックスワーカーの多くは「大成功は運によってもたらされる」と信じているのだそう。
10000バーツもらったとか、新しい携帯をかったもらった等のプチバブルな客をつかんだ女性に対し、能力や努力の結果だと賞賛されるケースはなくて、たいていは「ラッキー」で片づけられてしまっていたと市野澤先生は書いています。
だからおそらくこの手口は以前ふれた4つの戦略のどの場合でも発動するのでしょう。まあ成功率が高いのは相手と関係が築けていてかつ気前の良い「多角化」戦略でしょうけど。
そして、そんな「ラッキー」が転がっていると信じているから、ゴゴ嬢たちは大して指名されなくても、ゴーゴーで働き続けることができるのだとか。
「ラッキー」は待っていてもそうそう来るもんじゃないんですけど、すべて計算ずくの女よりはそういうコのほうが可愛いのかも知れません。
ちなみに僕はこの間「家賃が足りないから800バーツ送って」と言われましたがきっぱり断ってしまいましたw
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