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シャーデーのはなし at 1st night (3)


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Pink Panther』(twitterより)

 

 

翌31日の夜。連れの後輩3人は今夜もナイトバザールのパチものブランド買いに夢中です。何がそんなに楽しいのか、えんえんと商品を出させては値切っています。

つき合っているときりがないので、先に一人でシャーデーの店へ。

ゴーゴーが軒を連ねる通りに彼女の店はあるはずなのですが、 どの店がそうなのか、人が多すぎて看板がよくわかりません。

パッポンの店──とくにキングズ系がかたまっているところはどれが何という店なのか、いつもあまり把握せずに出入りしています。

 

どの店の前でも客引きたちが「ミルダケ、ミルダケ」と腕を引っ張ります。

ある店では、僕に向かって強烈に手招きをする女のコもいる。

30mくらい通り過ぎてはたと気がつきました。 シャーデーじゃん(笑)。

まさか店の前に立っているとは思わないから。

急いで戻ると、はたして彼女でした。

 

「どこ行ってたの?呼んだのに行っちゃうんだから」

まさか、気がつかなかったとは言えません。

「いや、友達を探してて」なんて適当な嘘をついておきました。

9時をまわっていたので、すでに店内は大混雑でした。

「一緒にいるにはコーラおごって貰わなきゃならないの」

彼女はそう言うと、とっとと席を立って自分のコーラを持ってきました。

はっきりしてて良いです。

シャーデーはこの日も昨日と同じ、Gパンにわりかしぴっちりしたキャミという私服姿。ダンサーの女のコはみんなステージ衣装のビキニの上にいろいろはおっているのですが、彼女の場合、どこからどうみても私服なのです。

まさか、今夜もすでに「売約済み」ってわけでもないだろうし。

 

理由を聞いてみると、どうやら彼女、ダンサーではなく「客引き」らしい。

店に「連れ出し料」を払えばダンサーじゃなくても連れ出しは可能です。

ウェイターもウェイトレスも。

ただし、全員が全員、ダンサーみたいにホテルまで来るのかというと、どうなのか。

まあ、ないならないでいいんですけどね。

小一時間ほど、僕らは二人で飲んでいました。

とはいっても、シャーデーはコーラをおかわりすることもなく、

僕がえんえんビールを飲んでただけですが。

 

仕事があるのか、単に友達とだべりに行っているのか、 彼女はしばしば席をはずして、いなくなっていました。一人で飲んでいると、ダンサーやらウェイターやらがコーラをおごれと盛んにたかってきます。

やつらはピラニアみたいなもんです。

うっかり一人におごってしまうと、われもわれもと群がって来て、骨も残りません。

でも、結局いつもおごっちゃうんですけどね(笑)

その場合も、ママとか手なずけておきたいウェイターとか、 なるべくピンポイントに絞るようにしています。気前のいいところなんて見せられません。心を鬼にしてケチに徹します。

 

しかし、そのうち後輩たち3人が合流してくると、そんな僕の中の「ルール」も徐々に骨抜きになっていきます。

それぞれが、これはと思った女のコにコーラをおごる、まあそれはそれでいいのですが、4人に増えたぶん、ウェイターとか、ウェイトレスとか、来て欲しくもないダンサーとかの攻撃も4倍に。一人に許すと関係ない奴まで飲みだして収拾がつかなくなってきました。

 気がつくと、わけわかんない手品をさかんに見せるウェイターにまでおごる羽目に。

一番おごっちゃいけないやつです。

 

それでも、オーダー1品ごとにテーブルに1枚持ってくる伝票が、今何枚でいくらぐらいなのかは、だいたいチェックしていました。

いや、すでに酔っぱらっているので、あくまで伝票に目を光らせている〝フリ〟です。

そうしておけば、まああからさまにボッタくられることはないだろうと。

それが甘い考えだったと後で思い知ることになります。

(続く)

 

 

 

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