市野澤潤平氏著『ゴーゴーバーの経営人類学』(03年)の内容をときどき感想などもはさみつつ紹介しています。
本書に描かれているシチュエーションは20年前のものなので、金額などはそのあたり含みおきください
ゴゴ嬢の思考や行動も当時とはけっこう変わってきていると思います
カネと愛情、この2つへの関心の高さからゴゴ嬢の行動パターンを読み解くチャート。4つのパターンのうち、本日最後に紹介するのは〝恋愛的関係〟です。
〝的〟が入っているので恋愛未満の友人関係もゆるく含んでおります。
ちなみにこの関係になるのは、ゴゴ嬢側のカネへの執着が弱く、客個人への愛着が強い場合とされています。下のチャートだと左上の部分ですね。
【ケース19】
グンはナナプラザのバーでキャッシャーとして働いている。彼女にはケンジという30代半ばの日本人のボーイフレンドがおり、一緒に暮らし始めて3か月になる。
グンとケンジが初めて出会ったとき、グンはダンサーだった。ケンジは貧乏旅行者で、グンをペイバーして連れ込んだのは安ゲストハウスだった。
その日以来、ケンジは毎晩のようにグンに会うために店へやってきたが、毎回彼女をペイバーする金銭的な余裕はなかった。しかし、そのうちにグンもケンジに愛情を感じるようになっていったという。
だからケンジから「一緒に住もう」と言われたときには躊躇なくそれを受け入れ、彼の要求に応えてダンサーを辞めキャッシャーになった。グンもまた、特定の恋人がいるからにはダンサーとして働くことはよくないと考えていたのだ。
ダンサーを辞めたため、グンの月収は1万バーツを割り込むことになった。二人は生活費を折半している。グンはダンサーの頃と違って、毎日開店前から出勤しなければならなくなった。
ケンジはいつも開店後にグンの店に顔を出す。そして店の隅に座り、一杯のコーラを注文して彼女の仕事が終わるのを待つのだ。ケンジが予告なく店に姿を見せないときは、グンは彼が他の場所で女遊びをしているのではないかと疑うのだ(実際、MPに行っていたことがあるのだが、その事実をグンは知らない)。
コーラ一杯で何時間もねばるのは退屈だろうということで、グンはケンジがナナプラザ内の他の店をぶらつくことは許可している。もちろん他の女をペイバーするのは厳禁だ。
2人の関係は店の誰もが知るところで、2人は夫婦のようだともっぱらの噂になっている。著者がグンにケンジのどこがそんなに好きなのかをきくと、「なぜだかわからないけど、私はケンジのことをとても愛している」という答えだった。
ケース19のような関係では「ゴゴ嬢と客の間にはきわめて強い愛情関係が存在するため、男性を〝客〟と呼ぶのはふさわしくない」と市野澤先生は言っています。
この〝恋愛トク的関係〟においては、女性から男性への金銭要求は最小限にとどまります。長い目で見たらトクになることをゴゴ嬢は期待しているかも知れませんが、表には出しません。
一緒に暮らす場合には、ゴゴ嬢も生活費を負担することもあります。このようにゴゴ嬢から金銭的な要求が少なくなるのには、いくつかの背景があると市野澤先生は指摘しています。
①女性側にもともとカネへの執着がない
②仕事とプライベートで明確に線引きをしている
③男の経済力を低く見ている
④他の男から十分にカネをもらっている
あまりロクな理由ではないですねw
しかし、もちろん男性をつなぎとめておきたい一心で金銭の要求を控えるケースもあるようです。
このようなケースでは、女性側はカネの要求を控える代わりに、自分にだけ愛情を向けることを男に強制します。そして極めて強い独占欲や嫉妬心を見せるのです。
よくあるパターンとしては男の浮気が発覚して修羅場になることです。
浮気を防ぐためにストーカーばりの拘束をされることもあります。
こうなっては他のバーガールにちょっかいを出すことなんてできませんから、その女性との関係を重荷に感じるようになる男性も多いようです。
また恋愛関係までいかなくとも、普通に友達として仲良くなる場合もあります。必ずしもSEXはなく、食事をしたり、遊びに行ったりして馴染みの客になるパターンです。
ゴゴ嬢も気安い客が店にいれば、嫌な客から逃げる理由に使ったり、暇なときには話し相手になってもらったりと重宝することは多いようです。
こうした関係は店の中ではオープンで、男性はゴゴ嬢のコミュニティの一員のように扱われることもあります。単なる金づるから昇格できるのです。そうした扱いを受けることに価値を感じる男性客も少なくありません。
次回、まとめます。
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