『ゴーゴーバーの経営人類学』が4章まで終わったところでキリがいいので、違う本のレビューをやろうかと思います。
今回取り上げるのは『バンコク恋愛事情 愛タイ!』07年発行の本です。
著者は青山誠氏。ライターというよりは作家ですね。主に歴史ものや海外もののノンフィクションなどを手がけています。エロ系は皆無です。
まえがきで本書を書いたきっかけを書いていますが、まあフツーに硬いです。
タイへ向かう年間120万人の観光客(当時)の中で男性だけのグループや単独男性の比率は意外と少ない、としながら、数年来そんな〝バンコクで遊ぶ男たち〟が気になっていたのだそうです。
「働き盛りの男が忙しいスケジュールを調整し、長時間狭い飛行機にとじ込められる苦難の旅をしてまで、なぜバンコク通いを続けるのか?日本でお手軽な風俗に通うか、素人相手に援助交際でもしていたほうが、よほどコストパフォーマンスは高そうな気がする」
そして、男たちはバンコクへ〝レンアイ〟をするために行っているのだといいます。さらには40~44歳の男性の7.9%が童貞だという統計をあげ、男性のコミュニケーション能力の低下が一因ではないかという仮説を述べてもいます。
そのうえで日本の風俗もバンコクの風俗も本質は同じなのに、バンコクには「レンアイ」だと勘違いさせる何かがある、というのです。
その何か、のひとつは〝経済格差〟なのかもしれないとしながら、ひとつひとつ検証していく──というのが本書の主旨のようです。
〝バンコクで遊ぶ男たち〟と指摘された当人としては、なんだか上から来られている感じであまり気分良くないな、というのがまえがきを読んだ最初の感想でした。まったくの門外漢にああだこうだと好き勝手に言われているようで。
しかしこの著者、門外漢なんかではないな、というのは本文を読めばわかります。詳しいんです。しかも昔の事情なんかもよく知っています。なかな勉強になる話も多かったです。こういう話は人から聞いただけでは書けないように思えます。自分で体験しないと。
本書の構成は次のようになっています。
1.コーヒーショップという名の錯覚世界(テーメー)
2、日本人のためのシステム化された悦楽空間(タニヤ)
3.田舎娘と女子大生の登竜門(ソイ・カウボーイ)
4.多国籍軍がバトルを繰り広げる恋の戦場(ナナプラザ)
5.相手を疑わないこと、それがレンアイの掟
( )は僕がつけました。
なんか、面白い構成だなあと思いました。テーメーから来るか、と。
僕がバンコクガイドを書くとしたら、ゴーゴーから入るなあ、という固定観念がなんか、あります。ガイドブックの多くはそうだったイメージがあります。
パッポンやMPが省かれているのは07年という時代ゆえでしょうか。昔はバンコクの遊びというと、真っ先にMPが挙がったときもあったようですが。そんな時代は僕も知らんw
パッポンは最近少し盛り返して来たみたいですけど、90年代に比べると衰退著しいですもんね。阿漕な商売ばっかりやっているから。
パタヤがノータッチな点も気になりました。07年はパタヤ派がどんどん増えて来た頃ですから。少し事情がわかる人ならパタヤは外せなかったはず。
このあたり、やはりバックパッカーとしてバンコクに関わって来た、という著者のバックボーンが見える気がします。
どうも少しズレている感がつきまといますが、ベテランの書き手だけあって本文は面白いです。次回から中身を紹介していきます。