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『ゴーゴーバーの経営人類学』をやさしくまなぶ (71)ゴゴ嬢、カネと〝演技〟


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『King's Castle1』(Twatterより)

 

 

市野澤潤平氏著『ゴーゴーバーの経営人類学』(03年)の内容をときどき感想などもはさみつつ紹介しています。

本書に描かれているシチュエーションは20年前のものなので、金額などはそのあたり含みおきください

ゴゴ嬢の思考や行動も当時とはけっこう変わってきていると思います

 

 

ほぼ1ヵ月ぶりの更新になってしまいました。

今頃みなさんタイで楽しくやってるんだろうな。

僕は寂しく日本で年末年始を過ごします。日本、寒いな。

 

ゴーゴーバーでの仕事は、職場で演技することを義務付けられるいわゆる〝感情労働〟ではないことは前回述べました。しかし、ゴゴ嬢も職場であるゴーゴーバーで演技をすることはあります。

 

とくに明るく陽気なキャラとして振舞うことは、お客のウケに大きくかかわってくる部分なので、やっぱりふだんよりもテンション高めです。

 

例えば、銀座のホステスさんがお客に対してとても愛想よく接してくれます。

しかしそれは、厳格な職業倫理や経営者からの教育の賜物です。それに対して、ゴゴ嬢たちが明るくハイテンションなのは、ママから強制されているのではありません。

 

もちろん、「ドリンク売ってこい、ペイバー取ってこと」ってことは言われているとおもいますが、ゴゴ嬢の愛想良さはあくまで自発的なものです。したがって、本人がテンション低ければ、愛想は悪くなります。

 

また、しばしばハイになって場を盛り上げた結果、仕事そっちのけで楽しんでしまうことは多いです。とくに酒やクスリが入ってしまうと商売を忘れがちです。

つまり、仕事に熱心に取り組んだ結果として、仕事から脱線してプライベートな親密さが増してしまう──、そんな矛盾が生じるのです。

 

しかし、ゴゴ嬢たちにとって仕事から脱線することは、必ずしも彼女たちにとってマイナスにはなりません。

彼女たちが友人たちとふざけ合ったりおしゃべりに夢中になることで、男性客が楽しんでくれてペイバーゲットの流れになることは珍しくないからです。

 

ときにはお客の機嫌を損なうという事態も起きますが、ゴーゴーの客の多くはマニュアル化された接客よりも一緒になって騒ぐようなノリのほうを好みます。

一見、やりたい放題のゴゴ嬢たちですが、そのことが店にとってもプラスの効果をもたらすのです。

 

ここで連日出てくるあのキーワード〝オクシモロニック・ワーク〟がまた出てきます。

 

つまり、仕事を放棄して自分が楽しんでしまうという、一見職業倫理に反することが、中長期的には経済的利益のプラスをもたらすという矛盾です。

おカネ目的の行動ではないのに、おカネが稼げてしまう仕事、それが市野澤先生の定義する〝オクシモロニック・ワーク〟なのです。

 

 

ゴゴ嬢と男性客の一時的な〝カネだけの関係〟が、少しずつお互いを知って仲良くなっていくことで、長期的な関係になる傾向があることはこれまでにのべてきました。

 

そういった関係では、生活や遊びの場面でのワリカンが多くなってきます。とは言ってもたいていの場合は男性側のほうが圧倒的におカネを持っているため、男性側からゴゴ嬢側へのおカネ流れが日常化するようになります。

 

さらにズブズブになっていけば「親が病気で」「弟が事故で」などといった、普通であればハードルの高い要求にも応えてしまうケースも出て来るでしょう。

男性側のゴゴ嬢への愛情が深まるほど、彼女の利益総額は跳ね上がります。最終的に結婚まで行けば、経済面だけでなく社会的に得られる利益はMAXです。

 

もちろん男性側がそこまでの要求に耐えられない場合も多々あります。

やはり男性側もやがて我慢の限界に達します。しかし、基本的には為替レートの恩恵で日本でキャバ嬢などに貢ぐのに比べればお安く済んでしまうため、「限界」に達するまではわりと期間がかかることが多いみたいですね。

 

でも、ゴゴ嬢側がそのあたりを上手く見極めて、無茶なおねだりをしなければ、そういうことにはならないわけです。それには2人の関係が〝カネが取り持つ縁〟をどれだけ超えたものであるかどうかが一番問われるわけです。

 

でも、このような長期の関係は、「完全にカネだけ目当て」だと成り立ちにくいです。

ただでさえ、好きでもない相手を好きなフリをすることはゴゴ嬢にとって難易度の高いことです。しかもそれが長期間で、行動を共にする機会も多くなる。すると〝演技〟のハードルは格段に高くなるのです。

 

でもたとえ〝演技〟じゃなくたって、あれを買え、これを買えとねだられまくるのも普通に困りますけどね。