ビリヤニを食べてとりあえずお腹は落ち着きました。
美味かったんだかそうじゃなかったんだかはよくわかりません。
店を出たところでこの連中と別れてサダルストリートに行かなきゃ。
ここから単独行動することを切り出そうと機会をうかがっていると、〝先生〟がまた余計なことを言い出しました。
「今、コルカタでは大きなお祭りをやっている。あなたはそれを見るべきだ」
街中はとにかく人だらけで、それがお祭りのせいなのかふだんからこんな感じなのかはさっぱりわからなかったため気づきませんでしたが、現在このコルカタではドゥルガー・プージャというお祭りをやっていて、しかも今日はそのフィナーレにあたる日なんだそうです。
そんな話、まったく聞いていませんでした。嘘じゃないのか。
ドゥルガー・プージャというのはヒンズー教の女神であるドゥルガー神を供養するお祭りで、インド各地で行われますが中でもここコルカタのある西ベンガルでは盛大にやる習慣があるんだそうです。
街のあちこちで腕が十本でライオンを踏んづけているドゥルガー神の山車が作られ、街を練り歩くそいつに米や花や水を投げつけるらしい。そして最終日には山車を川に流してしまうのだとか。
祭りは5日間にわたって行われ、屋台や催しも出て皆さんかなり浮かれポンチになるそうなんですが、さっきも言った通り僕はそんなお祭りチックな要素をここに来るまでにまったく見ていないのです。
サダルストリートではなくてもそれなりに賑やかな場所にはいると思っていたのですが、そうでもなかったらしい。どこだ、ここって。
しかし、川のほうへ向かって歩いていると、山車がどんどん集まって来ました。どうやら〝先生〟の言っていたことは本当だったようです。
この山車に飾られたドゥルガーの像というのがまたツボにくるシロモノです。もじゃもじゃのソバージュっぽい髪型に目が3つ&腕が10本でアバターみたいな青い肌、というただでさえ神様というよりは悪い妖怪寄りの容姿なうえ、なぜかお供を左右に2人ずつ従えています。
この像のクオリティも微妙なところです。インド人の家庭や店などにによく貼られている女神像(カーリー神)はこれと同じような容姿に加えて生首を片手にぶら下げていたりして、もっとパンチが効いていますが、これではないらしい。
もっともカーリー神もドゥルガー神の一つの形態らしいのです。たぶん。
それにしても、このドゥルガー人形がとても虚ろで怖い目をしています。小学校低学年ぐらいの子供にはちょっとトラウマが残ってしまいそうなレベルです。タイの地方によくある地獄のアトラクションと通じるものがあります。
これ、川で流れてたらけっこうホラーだと思うんですけど。
いったいどれだけの数の山車が集結してきているのでしょうか。
河原に設置された照明に浮かび上がった何十何百ものドゥルガー神が川へと運び込まれていく光景はとても宗教的で、ちょっと感動してしまいそうな光景でした。
いつしか僕は〝先生〟ほかの連れの存在を忘れていました。ふと気づいてあたりを見回しても姿が見えません。やつらのことはすっかり忘れ、時が経つのも忘れて、僕はずっと祭りの光景に見入ってしまっていたのでした。
(続く)
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