女だと思ってナンパしたLBにホテルの部屋で一服盛られ、金品いっさいがっさいを持っていかれてしまったMくん。
さきほど犯人らしき女?を見かけたものの、見失ってしまったようです。
一人イライラしながら席で煙草をふかすMくんです。
僕はといえばふだんナンパなんて無縁なのに、酔っ払ってその気になっているっぽいタイガールと第一種接近遭遇中だったので、そっちのほうが気になっていました。
できればMくんを放っておいてタイガールの元に戻りたいところです。
(まあ、放っておいていいよな……)
もう一人の連れであるNくんはどこかにナンパに行っているようで、ずっと戻ってきません。僕もソロ活動に励むべく、こそっと席をはずそうとしたそのときです。
突然Mくんがガバッと立ち上がり、獲物を狩る肉食獣のように人垣の中へと身を躍らせていったのです。
「捕まえたぞ、この野郎!」
Mくんにがっしりと腕を掴まれ、逃れようと暴れていたのは金髪に白いノースリーブ姿の美女でした。(けっこうな美人)
『Scratch Dog』はホテルの地下にあるので、入口の外は普通にホテルの廊下のようなスペースになっています。
入口の両サイドには数名のスタッフがいて、やってくるお客の受付や出入りするお客の腕に目印のスタンプを押したりしているのですが、なぜかスタッフの数がやたらと多くてただ出入りするお客を冷やかしているだけの連中もいます。
いちおう警備員なんですかね。
そんな入口から少し離れたスタッフの休憩スペースなのか、椅子や机が置かれた空間に僕、Mくん、Nくんは並んで座らされていました。
LBはさらに奥のほうでスタッフ(警備員?)から事情を聴かれています。
Mくんと僕は逃げようと暴れる彼女をなんとかこの入口まで引っ張って来て、スタッフに突き出したのでした。
「でもNって薄情だよなー。知らん顔してナンパに精出しているんだもんな」
さっきからMくんがNくんをぐちぐち責めていました。
事態をまったく知らなかったNくんは僕たちがLBを突き出したあとに、ようやく異常を察して駆け付けたのです。
Mくんと同い年ですがなんとなく子分肌のNくんは、ごめんごめんとさっきからMくんに謝りっぱなしです。完全に八つ当たりされてます。
「ゴーゴーさんなんてずっと手伝ってくれたのにさあ」
いや、僕も巻き込まれただけだから。できれば関わりたくなかったです。
(もうあのエロエロタイガールは他の男にいっちゃっただろうなあ。クラブでナンパできることなんてもう一生ないかも知れないのに……)
奥のほうでLBは涙ながらにスタッフに何かを訴えています。
金品をごっそり盗られたMくん、一生に一度のナンパチャンスを不意にした僕、まったく関係ないのに八つ当たりされているNくん。
そして、のこのこ犯行現場に現れて捕まってしまったLB──。
スタッフを除いて、ここにいる男たちの誰もが不幸の図でした。
しかし、男4人の不幸な夜はまだ続きます。
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