市野澤潤平氏著『ゴーゴーバーの経営人類学』の内容をときどき感想などもはさみつつ紹介しています。
前回まではお客のタイプによってゴゴ嬢がとる基本的な4つの営業戦略について解説しました。
今回はその具体的な例を見ていきたいと思います。
↓「4つの基本戦略」の詳細はこちら
【ケース3】
パーはラオスのビエンチャン出身、ソイカウボーイで働いている21歳。
彼女には3年の付き合いになるドイツ人の客がいる。
最初に彼と出会ったとき、パーはビエンチャンから出て来たばかりで、白人を見るのは珍しかった。その男性は20代で若く、見た目もイケていたため、好印象だった。だから、男性がペイバーしてくれるというと、素直にホテルへついて行ってSEXをした。
パーはペイバーされるのが初めてだったので、朝までホテルにいたにも関わらず、ショートタイムの相場である1500バーツを出されるままに受け取った。
ドイツ人はパーが気に入ったようで、1週間ほどの短期滞在だったが帰国前日までのバーファインを先払いして、ホテルでずっと一緒に過ごすように言った。
まだ店泊だったパーは喜んでその申し出に乗った。一緒に過ごすと男性は必ずしもケチではなく、いろいろ物を買い与えてくれた。図に乗ったパーは店での衣裳を2000バーツで買ってもらったりもした。
彼との間はそれっきりだと思っていたパーだったが、2年後に再会する。
ドイツ人はタイ語学校に通っており、「学生だから以前のような大盤振る舞いはできない」という。彼の住む質素なアパートを見てパーは納得し、彼からは金銭をとらずに気が向いたときにビールをおごってもらう間柄となった。
ときにはSEXしてしまうこともあったが、パーはお金は取らず、いくばくかのタクシー代をもらう程度だった。
やがてドイツ人はバンコクで働き始めた。すると他の女の影が見え隠れするようになったので、パーも男に対する態度を改めた。
自分からは連絡をせず、彼が望むときにアパートに会いに行く。彼も以前とは違ってSEXをすると1000~1500バーツを黙っていてもくれるようになった。
パーはドイツ人の女性関係を追及することはない。それが自分のトクにならないであろうことを知っているからだ。(『ゴー経』本文よりまとめ)
お客の属性の変化に対応
このケースでは1人の男性の属性が変化するのに応じてゴゴ嬢は相手への接し方を変化させているのがわかります。
最初の時点では商業的SEXをするだけの相手だったのが、リピートしてくれたことによって良いお客になりそうになると〝収奪戦略〟にシフトして行動を共にすることで利得を引き出そうとします。
2年後に再会して、ドイツ人に以前の気前の良さがないとわかると、経済的な利得抜きの〝日和見戦略〟に移行します。もちろん相手への純粋な好意もその背景にはありますが、保険的な意味で関係をキープしているようにもとれます。
そして、男性が職を得て金回りが良くなると、〝多角化戦略〟に移ります。あくまで男性のペースに合わせつつ、きっちりと金銭を引き出すのです。それは仲の良い間柄であることを利用して最低限の労力で一定のお金を稼ぐのが目的で、相手の心証を悪くしてまで、多くを求めることはありません。
どうかなあ、こういうふうに賢く立ち回れるコってどのくらいいるんでしょうかねえ。一般的なゴゴ嬢だと、他の女の影なんかあろうものなら大立ち回り、っていう印象ですよね。
おそらくパーさんは他にも客を持っているコで、だからこのドイツ人は少々泳がせてく余裕があるのかも……なんて思ってしまいました。
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