市野澤潤平氏著『ゴーゴーバーの経営人類学』(03年)の内容をときどき感想などもはさみつつ紹介しています。
本書に描かれているシチュエーションは20年前のものなので、金額などはそのあたり含みおきください
ゴゴ嬢の思考や行動も当時とはけっこう変わってきていると思います
ゴゴ嬢と客の間の恋愛感情って、男性客側はまあまあ本気だったりしますけど、基本、ゴゴ嬢は営業ベースです。
でも、ゴゴ嬢だって人の子ですし、やっぱり情がうつるときだってあります。
また、男性客に惚れられてちやほやされることで、自己肯定感が大幅に上がってしまうことだってあるようです。
【ケース22】
ニンはナナプラザで働き始めて3か月になるが、一度もペイバーされたことがないという。31歳の彼女は夫に逃げられ、二人の子供を郷里に残してバンコクへ出てきたが客がまったく取れないため、月収は5000バーツほどにしかならなかった。
すっかり自信を失った彼女は著者に今度の給料をもらったら、店を辞めると宣言した。友人からメイドの仕事を紹介してもらうのだと言う。給料は今よりも安くなるが、住居と食事が付くので仕送りは多くなるはずだと言った。
給料日が過ぎたころ、著者が再びそのバーを訪れると、ニンは辞めていなかった。ペイバーしてくれる白人の客がついたのだという。
「ここでがんばるほうがメイドになるよりもいいような気がする。ところでコーラ1杯頼んでいい?」
ニンが著者にコーラをねだるのは初めてだった。初めて自分を買ってくれた客と出会って、彼女は以前よりも仕事に積極的になったように見えた。
上記はお客がついたことで仕事に前向きになれたというケースです。
ただ、ゴゴ嬢の場合は一般のキャリア女性とは違って、こういった成功体験を通してそれなりに稼いだとしても、社会の見る目はなかなか厳しいものなのだそうです。
それは、一般的なタイ人の道徳基準からするとセックスワーカーは道徳的に好ましい職業ではないという偏見があるためです。
ゴゴ嬢たちの経済的なサクセスや都会風のイケてるファッションなどは田舎の人々から羨望のまなざしで見られることは事実ですが、それでもやはり彼女たちの一部は実家の両親に自分の職業を正直に言っていなかったりすることも多いのです。
田舎から出て来たばかりの〝美人すぎるウェイトレス〟ってたまにいますよね。
年のころは18歳ぐらい。ドリンクなんかおごってあげると、目を輝かせて喜んでくれたりするような。
観察していると、やがて時々ペイバーされるようになり、化粧がどんどん濃くなっていったと思ったら、いつの間にかゴゴ嬢になっていて、酒のせいか腫れぼったい顔をしていることもよく見かけるようになり、さらに次に来たときには店からいなくなっているパターン。この間半年ぐらい。
そんなコを何人見送ってきたことか。
自身の価値に気付く、ということは、必ずしも本人の幸せと直結しているとは限らないと思います。
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