出会い系の話からテーメーカフェへ話題を持ってくるというのは、
われながら少々強引な気もします。
しかし、最初は〝フツーのコがウリもやっちゃう場〟として誰しも認識してあそこに足
を踏み入れているわけで、〝出会い系〟を称しても決して的外れではないと思います。
街中で、〝立ちんぼ〟の人が立っているのとは、またちょっと意味合いが違ってくる気
すらしてしまいます。
その証拠に、入口のところから中へ入れない人たちがたむろするエリアの弱肉強食ぶり
は、ワイルドライフの厳しさを身をもって教えてくれています。
嬢たちの店内での待機位置が、そのたゆまざるマウンティングの結果を現わしていると
いうことも、数回店に足を運べば見えてきます。
おかげで、僕にはあそこにたむろする嬢たちが、サル山の猿に見えて仕方がありませ
ん。
だから、テーメーにはよく顔は出すんですけれども、だいたい1~2周見て回って終わ
り、というパターンです。知人は古株の女のコとは顔見知りだったり、内部の派閥事情
に妙に詳しかったりするやつもいますが、僕にはそんな知り合いもいません。
ただ、ビールは安く飲めるのと、混んでいなくて座る場所があれば、いくらでも飲んで
いられるので(ただし、ビールをおかわりするときに席を失うことも多い)、よく一人
でボーッとビールを飲んでいました。
そんな私ではありますが、タイへ来はじめた頃は好奇心も旺盛だったので、ためしに何
度か女のコをここから持ち帰ってみたこともありました。
当時書いた文章を発見したので、再掲します。
テルメについたのは1時を少し回ったころ。
スクンビット通りに面したビルの地下へ降り、突き当たりのドアを開けるとすでに大盛況でした。
「うわーッ」という喧噪ががぶり寄りで僕を圧倒してきます。
キャッシャーにいるおいちゃんにご当地銘柄のクロスタービールを注文して受け取ると、 店内巡視の旅の始まり。
バスケットコート2面ほどの広さの店内には、中央に楕円形のカウンターがあり、 その
周囲に多少のボックス席があるという構造なのです。
椅子がホントに数えるほどしかないため、店内にいる客の8割は座ることが出来ません。
基本的な構造としては、中央のカウンター(内と外を問わず)やら壁際に、女のコがす
ずなりに立っております。
それに男が群がるような感じで、立ち話をしたり、座って飲んだりしている、と。
歩いているだけで、大変。
ラッシュアワー直前の電車ぐらいは、という人の密度です。
ここの女性はフリーランスのプロ、客にあぶれたゴーゴーバーのコ、昼間は仕事をして
てたまにお小遣い稼ぎにくるセミプロなど、さまざまです。
むろん、日本人もいっぱいいました。…っていうか、ほぼ日本人ですね。
日本人はなぜか着ているものがこぎれいに見えます。
カウンターのまわりを2周ほどしましたが、まあ、どうってことはありませんでした。
以前来たときにも声をかけられた女に腕をつかまれたりもしましたが、 この人はそうと
うなベテランの風情なんで、振りほどきました。
たまたま、4人がけのテーブル席の椅子がひとつ空いていたので、座ります。
チャオプラヤ川の水面を群生して漂うホテイアオイのような男女の群れを肴に飲んでました。
ふと、気が付くと、 僕の隣に座っていたひげ面のアラブ人がいつの間にかいなくなって
いて、いつの間にか二人連れの女のコに。
茶髪ロングのムチムチした小柄なコと、ショートで、首筋のやたらすらっとしたコ。
ショートのコのほうが、いかにもおねえさんといった感じで僕の隣に座り、 茶髪ロング
はその前に立ってなにやら話しています。
ショートはなかなかの美形です。大きくて切れ長の目、きれいに通った鼻筋。 石田ゆり
子の目を少しきつくしたような。
目だけ、石田ひかり。わかりづらいすか(笑)
二郎さん(石田父)に厳しくしつけられたかのような品の良さもあります。
背筋と首筋がぴしっとまっすぐなんですよね。
じっと彼女の顔を眺めてたら目が合ってしまいました。
彼女は僕を見て微笑み、少しだけ照れたように会釈をしました。
(続きます)