このお話もだいぶ進んでまいりましたが、そういえばコルカタという都市について何の説明もしておりませんでしたので簡単に。
コルカタという呼び名よりもカルカッタといったほうが馴染みがあるかも知れません。
世界史で習った3C政策という言葉も示すとおり、帝国主義時代のイギリスの植民地経営の一大拠点で当時のコロニアル風の美しい街並みでも知られています。
インドの東側の玄関口であり、第2の都市でもあります。人口密度においてはインド随一で貧民が多いことでも知られ、ここを拠点に慈善活動を行ったマザー・テレサの「マザー・テレサハウス」も有名です。このように観光地としての見どころは決して少なくない街ですが、この3日間僕は何も見ていねえ。あ、ドゥルガー・プージャは見ましたけど。
それは初日にホテルで会った〝先生〟一行に連れ回されているからなんですけど、この先どうなっちゃうんでしょうかねえ。
とっても気まずい朝食の時間を過ごしました。
バカボンの家族関係はいったいどうなっているのか。ひとごとではありますが心配せずにはいられません。育ちは決して悪くないというのは分かるんですけど、家族からは相当冷ややかな目で見られているようです。
そんなことを考えていると、先生が口を開きました。
「ゴーゴー、私はあなたとの友情を記念してプレゼントを贈りたい」
「そんなもの、別にいらないですよ」
「ぜひ受け取って欲しい。これから買いに行こう」
相変わらず有無を言わせません。こんな感じでこの2日間、彼のペースであちこち連れ回されています。これって〝軟禁〟って言うんじゃないだろうか。
「いいですね。じゃあ、マーケットに買いに行きましょう」
いつも〝先生〟に乗っかって煽る役割がバカボン。ハンプティやオジサン1、2号は口々に相槌を打つだけです。
こうなると、もう僕が意見を差し挟む余地はまったくありません。
どこのマーケットなのかよくわかりませんが、バカボンの家を出て10分ほど歩いた場所にある一軒の店に連れて行かれます。店の中には色鮮やかな布や衣類などがショーケースに収められています。ブティック……というよりはやはり土産物屋かな。
僕は嫌な予感がしていました。なぜ、彼らはこんなに僕を連れ回すのか。
今のところ行った先々での飲食はたかられていますが、それ自体は大した額ではありません。オジサン1、2号以外の3人はそれなりに身なりもキチンとしているので、それっぽっちたかりたいがために3日間もの時間を費やすとは考えられないのです。
そこで考えられるのが知り合いの店に連れて行って高額な買い物をさせるというパターン。宝石類などを売りつければ、数十万円ぐらいは稼げるでしょう。「地球の歩き方」などにもよく載っている手口です。
ようし、絶対に怪しい物は買わないぞ。
そもそも、これから先の旅も長いのです。少しでも荷物になるものは持って行きたくないので、これまでもお土産の類いは極力買わずに来ましたし、仕方なく購入したものなどを一度、タイから日本へ郵送しています。
ただでさえ必要のない物を高いカネを払って買わされるなんて絶対にありえません。
(ここがこいつらとの勝負の正念場だ。絶対に負けるものか)
僕は密かに腹をくくったのでした。
(続く)
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