ふと目が覚めると、僕はホテルのベッドの上で服を着たまま倒れていました。
時計を見ると朝の5時です。
(そうか……ゆうべは確かめちゃくちゃ飲んだんだよな…)
R3にいたのは覚えていますが、いつ、どうやってホテルの部屋まで戻ってきたのか、さっぱりわかりません。
ふと、横を見ると人が寝ています。
(あれっ、誰かペイバーしたんだっけ?)
でも、寝ている人は大きめのTシャツひざ丈の短パン。寝巻とかじゃなくて僕同様外着のまま寝ているようです。
体つきも全然色っぽくないなあ、酔っ払って変なのペイバーしちゃったのかなあ…と思いながら顔をみるとヤムでした。
そういえばテキーラが出てきてから何回もヤムと乾杯してわけがわからなくなったんでした。ビッグ・ファット・ママに、
「ヤムが酔っ払って仕事にならないからペイバーしなさい」
と怒られてペイバーしたんでした、たぶんw
冷静になってみて、自分のあまりの無防備さに一瞬ドキッとします。
昔のナナホテルなので部屋に貴重品ボックスはなく、貴重品はフロントの貸金庫に預けるシステムです。現金は預けてありますが、それ以外の貴重品カードと現金の入った財布、PⅭ、当時だと30万ぐらいするデジタル一眼のカメラなど、昏睡強盗が持っていくとウハウハなものは部屋のそこここにあります。
そんなことはないだろうと思いつつチェックしてみましたが、やはりなくなったものはありませんでした。
ヤムを100%信用しているわけじゃないけど、まだ本人寝てるしw
いちおう大事なものだけスーツケースに入れてカギをかけ、着替えて再び眠りました。
次に目が覚めると、ヤムの姿はもうありませんでした。
時間はもうお昼近くになっています。ヤムも目を覚まして帰っていったようです。しかし頭がガンガンします。外に出る気にもならず、昼食を食べに出た以外はほとんど部屋でゴロゴロしていました。
それでも日が暮れて夜になれば、やはりゴーゴーへ出陣します。
最後の夜なのでR3は最後にとっておいてゴーゴーをハシゴします。何軒めかにR1に入ると、いきなり胸にどすんと黒い大きな物体がぶちかましてきました。
「ハロー、ゴーゴー~♪」
たしか昨日ここでウェイトレス何人かに奢っていますが、こんなビッグなやつはいなかったはず。
吹っ飛ばされそうになるのを何とか踏みとどまると、なんとビッグ・ファット・ママではありませんか。なんでここにいるの?
「こっちに人がいないっていうから手伝いに来ているのよ」
どうやら1と3は同じボスの管轄で姉妹店なんだそうです。どっちかの店で手が足りなくなると行って手伝うことがあるみたいです。…って3は今夜もたぶん暇なんですね。
とりあえずハイネケンを2本頼んでママと乾杯しました。
「ゴーゴー、今夜も1人?」はいはい、私はいつでも1人ですとも。
「ちょっと待ってなさい」ビッグ・ファット・ママは人がひしめきあっているR1のフロアをのしのしとかき分けて店の奥のほうへと消えて行きました。
しばらくして戻ったママは茶髪の小柄な女のコを連れていました。
(続く)
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