「ディスコに行くよ!」
おそらく開店前から飲んでいるであろうに、店がクローズになってもまだまだ飲み足りない様子のゴイちゃん。彼女の音頭でディスコへ行くことになってしまいました。もう帰りたいのに。
ゴイ、僕、ジーンともう一人のゴゴ嬢の4人でタクシーに乗り込みます。
場所はゴイちゃんが運転手に指示しています。タクシーは細かい路地を縦横にぐちゃぐちゃ走って10分程度で目的地に着きました。
場所的にはペッブリー通り近辺でしょうか。アソークは越えていないはず。
タクシーから降ろされた場所は住宅街とも倉庫街ともつかない寂しい場所でした。
街灯も満足にないのであたりは真っ暗です。こんなところにディスコなんてあるのでしょうか。連れて来たのがゴイでなければ絶対に逃げているところです。
ゴイは慣れた様子で建物と建物の間路地へ入って行きます。
そして1軒のビルへ入りました。ビルには看板も何も出ていません。ホントにこんなところにディスコなんてあるの?
後をついて階段を下りて行くと、不意に広いスペースに出ました。
そこは倉庫か何かを改造したのか、コンクリート打ちっぱなしのだだっ広い部屋でした。入口から見て右奥にバーカウンターとDJブースがあります。
いちおう音楽は大音量でかかっていますが、照明も薄暗くしてあるだけ。フロアでは数人のタイ人の男女が身体を揺らしています。
でも、こんなクラブは日本にもありそうです。あんまり行ったことないけど。
カウンターの前には大きいテーブルが置いてあり、座れるようになっていました。
とりあえず人数分のビールを買ってきて飲もうとしたその時、照明がパッと明るくなり同時に音楽も止まりました。
「ポリスがきちゃったみたい」
見ると警官が3~4人入って来てカウンターの中の従業員らしき若い男と何やら話しています。フロアにいた男女は引き揚げ始めています。
「営業中止みたいね」
ゴイが憮然として言います。やった、これで帰れるかな?
時刻はすでに午前3時を回っています。僕もたいがい飲んでいるのでそろそろ気持ち悪くなってきているし、ジーンやもう一人の女のコもへろへろで帰りたそうです。
「よーしじゃあ、カラオケに行こう!」
そんな僕らにお構いなしに店を出るとスタスタと歩き出すゴイ。僕たちは仕方なく彼女の後をついて行きます。
真っ暗な場所を5分ほど歩いた場所にあった「カラオケ」は、フツーの木造の一軒家でした。中へ入っていくとやはりフツーに他人の家です。2階もそんな感じ。
廊下を通って空き部屋っぽい部屋にはいると、10畳ぐらいのスペースに大きなテーブル一つと椅子がいくつかありました。ここ本当に店なの?
テーブルの上にはビールやジュースの瓶やつまみらしいスナック菓子などが並べてありました。すでに7~8人の男女が椅子に座っており、僕たちは同席するかたちに。
「800バーツ払って」ゴイがいうので1人の男にお金を渡します。あ、どこかで見たような顔だと思ったらさっきの〝ディスコ〟でDJやってたやつじゃん。
どうもここにいる連中はだいたいゴイとは顔見知りで、全員で彼女の誕生パーティをしようってことらしい。…ってか、それやっぱりホームパーティじゃん。
しかもなぜか僕が全員に奢る感じになっているみたいだし。
ジーンが浮かない顔をしているので「どうしたの?」と聞くと、
「ゴイちゃんいつもここで昼間で飲むの。私、明日仕事に行けない」なんて言います。
マジか。昼までつき合わされてたまるか。
しばらく飲んでいるとまたいきなり照明が明るくなりました。
見ると部屋の入口にまたさっきの警官たちが……。やっぱりお店だったの、ここ?
さすがに今度という今度こそはパーティはお開きになり、僕はなんとかホテルに戻ることがでたのでした。めでたしめでたし。
ところでカラオケはどこにあったんだろう?
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