市野澤潤平氏著『ゴーゴーバーの経営人類学』の内容をときどき感想などもはさみつつ紹介しています。
前回はゴゴ嬢たちは仕事とプライベートの境目なくつるむことで、助け合っているというお話、そのケーススタディです。
【ケース8】
ナムフォンはソイ・カウボーイの店に勤めるゴゴ嬢だ。コンケーン出身の27歳で現在は恋人とバンコクで二人暮らしをしている。
ナムフォンにはぺーという親友がいる。同じコンケーン出身の24歳で、やはりナムフォンのアパートの近くにタイ麺の恋人と住んでいる。ペーは背が高く、スタイルも良いので頻繁に客からオフされる。さらに海外から送金してくれる客も複数いるようで、金回りはいい。
2人は知り合って4年で以前は部屋をシェアして一緒に住んでいたこともある。今でも互いの部屋を行き来するだけでなく、店への行き帰りも一緒だ。
店内でペーが客についているとき、ペーはなるべくナムフォンもドリンクをおごってもらえるようにお客に頼む。客と遊びに行くときもできるだけナムフォンも連れて行ってこらえるようにする。気前のいいお客だとナムフォンのぶんもペイバー料を払って連れて行ってくれることもある。
ぺーは売れっ子なので、お客同士がバッティングすることもしばしばある。お客がナムフォンと顔見知りなら、そんなときにナムフォンが代わりに一方のお客につくことができるのだ。
その間に客はナムフォンにペーの私生活について、あれこれ探りを入れることもある。そんなとき、ナムフォンは「彼女には恋人はいないし、とくにパトロンもいない」と答える。「ぺーは性格の良いコだし私は一緒に住んでいる」と言うこともある。客がぺーの(タイ麺と住んでいる)アパートに押しかけるのをけん制するためだ。
ぺーは嫉妬深い客の機嫌を取るために、頻繁に嘘をついている。そしてそれに口裏を合わせてやるのがナムフォンの仕事なのだ。
客にオフされたあとに常連が来たら「体調が悪くて帰った」と言ったり、ペーが店でお客と盛り上がっているときに他の客から電話が入ると、ナムフォンが代わりに出て適当に受け答えをしたりもする。
ペーは自分の客にナムフォンを紹介するときは「姉だ」という言い方をしている(タイ人は親友をそのように人に紹介することがある)。客にナムフォンが自分の代理のように振る舞うことが不自然でないように思わせるための手だ。
ナムフォンも心得たもので、自分が先に知り合った客でも自分に興味がなさそうだと、ペーのことを「妹だ」と言って斡旋することもあるのだ。
このようなゴゴ嬢同士の関係は、親しい友人たち何人かの間にとどまっています。
ゴーゴーの店内はこうした小さな人間関係のグループがたくさん乱立しており、これらのグループが一致団結して労働組合のような公的な組織に発展することはないし、1グループだけが強くなって店を〝シメる〟ような存在になることもありません。
それは、ゴーゴーバーという空間はゴゴ嬢の出入りはきわめて激しく不安定であり、長期間在籍する者は逆に年を重ねるごとに存在が薄くなる傾向にあるからだと市野澤先生は分析しています。
ケーススタディみたいなことは胸にてを当てて考えてみるとありますね。
ゴーゴーに行ったらお気にがいなくて、その友達が「彼女は今日は休みなの」とか言ってしゃしゃり出てきたので、仕方なく彼女を席につけて飲む──みたいな。
あれは嘘だったのかなあ。
ああいうふうに言われたことって全部信じてきたんだけどなあ。
今度からは「こういう裏があるかも」と猜疑心や嫉妬に駆られることになりそうです。
まあ、そんな諸事情も飲み込んでスマートに遊びたいものですけど。
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