市野澤潤平氏著『ゴーゴーバーの経営人類学』の内容をときどき感想などもはさみつつ紹介しています。
地方に住む年頃のミーハーなタイ人女性には、ゴゴ嬢は都会的、現代的な職業に見えている、というお話。ホントかなあ。
彼女たちにとってはRCAに立ち並ぶクラブや巨大ディスコは極めて魅力的みたいです。
暗い店内、煌びやかなライト、大音響のダンスミュージック、そして酒……これらはそんなナイトスポットのイケてるイメージなのです。
うん? それってまさにゴーゴーバーじゃないですかwww
それが職場なわけですから、ステージで無理くり踊らされるという点を除けば、決して不快ではないはず。
さらに、職場には友人がいっぱい。お客とのオフやプライベートでディスコに行くときも同じようなメンツでつるむわけで、仕事と遊びの境界はますます曖昧になります。お客が自分の好みだったりすると尚更です。
【ケース14】
ソムはラチャダーのMPで2年働いて店への借金を返し終わったため、ナナプラザのゴーゴーバーへ転職した。MPで働いていたころからディスコが好きで深夜12時に仕事を終えると店の近くのディスコによく通っていた。
ソムはMPの仕事が好きではなかった。重労働のうえに就業時間中はずっと拘束されていなければならない。とくに待機中に〝金魚鉢〟の中でじっと座っていなければならないのが退屈で嫌だった。
そんなソムにとって、ゴーゴーバーは理想の職場に映ったらしい。オフされれば、その時点で店の拘束から解かれるし、店内にいるときもけっこう自由でステージがないときは友人たちと話していられるのもありがたかった。
ディスコ好きのソムには店内のBGMであるダンスミュージックが好きで、気分が乗ればステージでもノリノリで腰を振る。客にオフされたり、懐に余裕のあるときは店が終わってからディスコへ繰り出すこともしばしばだ。
ソムは客の席に着くとなるべく酒を飲まそうとする。自分はドリンク1杯でも、客はたくさん飲むように勧めるのだ。ゴーゴーの客はその後の〝勃ち〟を心配してか、あまり飲まない客が多いのだが、ソムに言わせると酔っ払いのほうが相手をしていて楽しいという。だから、馴染みの客などには自腹で買っておいたタイ・ウイスキーをふるまって客のテンションを上げさせることさえある。
そうやって客を盛り上げておいて、自分をオフしてディスコへ行かないかと誘うのだ。
酒が入ることで、ゴゴ嬢にとってゴーゴーバーは〝遊び場〟に、客とのつき合いさえ〝遊び〟になります。
客がゴゴ嬢に飲ませることは、店の売り上げになります。
だから、多くの水商売の店がそうであるようにゴーゴーでも奨励されています。
また、女のコが酔っ払ってハイになればお客も盛り上がるので、女のコが飲むことは奨励されていますし、店がタダで女のコに飲ませる場合もあります。
ゴゴ嬢すべてが酒好きではありませんが、働くうつに徐々に馴染んでいくでしょう。仲の良い同僚たちとお客を囲んでの乱痴気騒ぎは、もはや仕事なのかプライベートなのかわかりません。
ゴゴ嬢は勤務時間を楽しく過ごせるという点では、ゴゴ嬢という仕事を悪く思ってはいないようです。カタギの工員やウェイトレスといった単調で刺激のない職場よりは遥かにマシであるという意見を市野澤先生は多々耳にしたそうです。
店によってはカウンターに女のコ用のボトルがあったり、店の一角にドリンクが置いてあるコーナーがあったりして、女のコたちはそこで飲み物を作って飲んでいることがあります。
コロナ前のレインボー3では、女のコの誕生日や年末などイベント時にはビールやタイウイスキーなどが店の一角に置いてあって、みんな好き勝手に飲んでいました。僕もおこぼれを頂戴することがよくありました。
そんな感じなので、ふだんから泥酔した従業員が特に多い店でした。
イベント時など、ひどい場合はカウンターの外のスタッフはほぼほぼ酔っぱらっており、翌日は二日酔いで欠勤するもの多数というありさまでした。
面白かったなあ。
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