市野澤潤平氏著『ゴーゴーバーの経営人類学』(03年)の内容をときどき感想などもはさみつつ紹介しています。
男はなぜゴーゴーバーに魅せられるのか。
その魅力は必ずしもSEXそのものではないというお話の続きです。
【ケース15】
山本は年に10回近くタイを訪れる典型的な〝タイ好き〟日本人だ。30代後半で自営の仕事をしており、妻子はいない。
比較的時間が自由になるので、タイを頻繁に訪れることができる。年末年始を除けば毎回1週間程度の長さだが、その間数多くのタイ人女性と接触を持つ。
タイを訪れている間の典型的な1日は、まず昼頃に起床。ゆっくりと食事を済ませて部屋でくつろいでから(このとき前日にベッドを共にした女性がいることもある)、ラチャダーやペップリ―のMPへ。夕刻に混みだすまでに訪れる。
その際、これまでに知り合ったタイでの遊び仲間(日本人)と連絡をとって連れ立って行くこともある。仲間とはふだんから連絡を取っており、タイに行くときにはスケジュールを互いに知らせ合う。仲間は在住者もいればふだんは日本にいる人もいる。
山本はSEXをするのは基本MPだと決めている。決まった金額(しかもリーズナブル)で内容の濃いサービスを受けられると考えているからだ。
MPを出たあとは、ゴーゴーやカラオケクラブに繰り出す。夕方になると山本の携帯にはカラオケのホステスやゴゴ嬢からの営業電話がバンバン入る。山本は日本にいるときもなじみの女性には連絡を入れて、訪タイ時にはスケジュールを知らせてあるのだ。
その後は毎晩夜中の2時まで、女たちにあちこち引き回される。以前は必ず一人はお持ち帰りしていたが、最近ではそれはしない。観光客が行かないような飲み屋や女性たちのアパートへ行くほうが〝えっち〟よりも面白いと思うからだ。
そのぶん女性たちにメリットがあるように、飲食代金やちょっとした買い物などには気前よく払うことにしている。また、自分からSEXのオファーはしないが、女性が経済的に困っているようであれば、断らないという。
あからさまに金ヅルとして扱われると気分が悪いが、友人として頼ってくれるのなら期待に応えたいと思っているのだ。
山本氏の例のように、男性客がゴゴ嬢との間にカネだけではない関係を求める理由は、自分の「男」であることを確認しているのだ、と市野澤先生は指摘しています。
それは「セクシーでマッチョな頼れる男」への憧れであり、実際に日本ではでそういった男尊女卑なオヤジ像が古いものになってしまっていることへの反動だというのです。
世間では年々女性の社会的、家庭的な存在感は増しています。
男性から伝統的な男としての役割、存在感が奪われていることにより、男たちは自らのアイデンティティを保つためにあがいているのだといいます。
かの上野千鶴子先生も「男女の性交渉に際して女性がかつてのように受動的でのみあろうとはしなくなったため、女性と性交渉を持つにあたって男性の心理的負担が増している」と指摘しております。
ちょんの間ならともかく、プライベートでは入れて出すだけじゃ通用しないってことですかね? …ってか昔はそれで通用したのか?
現実の世界では女性が強くなる一方で、AVなどでは変わることなく、男性がガンガン突いたりガシマン攻撃するような作品が多いです。
それは、女性に対して男が常にマッチョであり続けることを迫っているのです。
そして、時として男性は女性を〝モノ〟化して扱うようになります。
女性と正常に関係を築けないという現状から解放されるためには、穴に入れて出すだけの買春に走るしかないのです。
しかし、市野澤先生いわく、ゴーゴーバーでは、SEXは相手のモノ化ではないそうです。それはゴーゴーの客はどこかでゴゴ嬢に対して差別意識があって、相手に対して一切のコンプレックスがないからなんだそうです。
欧米人や日本人の男性が、一般のタイ人に抱いているふわっとした優越感、それはゴゴ嬢に対してはジェンダー的・セクシュアリティ的な差別に拡大されていくと市野澤先生は結論づけています。
以上のように、ゴゴ嬢にしても男性客にしても、ゴーゴーバーという場にやってくる動機は必ずしもカネと色欲というだけでなく、その他の楽しみやコミュニケーションを通じた、必ずしも経済の論理だけでは割り切れない関心なのです……。
これは……どうなんでしょうねえ。
ゴゴ嬢たちの行動を見ていると、どうしても小馬鹿にしてしまう局面はあります。
だって馬鹿なんだもん。でも、もちろん、みんながみんなではなくて、馬鹿な日本人がいる程度に馬鹿なゴゴ嬢もいるからだと思います。
でも、SEXするにあたって、安いのは必ずしもお金の額だけではなくて、どこか「気安い」感じがしてしまうのは否めません。
日本のキャバじゃあ、絶対にしないようなセクハラを炸裂させてますしw
でも、決して〝モノ〟として扱っているつもりはないんですけどねえ……。
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